(2012年4月1日)
「信仰によって無条件で救われている」ということと、「日々きよめられ、成長していかなければならない」ということが、うまくつながらないという質問を受けました。こんなたとえ話でお答えしました。昔々、エーコちゃんというストリートチルドレンがおりました。エーコちゃんは、それはそれは劣悪な生活をしておりました。王さまの娘という身分を獲得するのは無条件です。たとえ、どんなに王さまの娘としてふさわしくない態度をとっていたとしても、その身分は無条件に与えられます。これが、「行ないではなく、信仰によって救われる」ということです。
ある日、立派な身なりをした紳士がエーコちゃんの住む町にやってきました。そして、ゴミ箱をあさっているエーコちゃんを見ると、「私は遠い国の王さまだよ。私の娘になっておくれ」と言いました。
最初は、変なおっさんがやってきて、うまいことだまして人身売買でもする気だと思ったエーコちゃんは、このおっさんの言うことを聞こうとしませんでした。
ところが、このおっさんは毎日やって来て、「娘になっておくれ」と言い続けました。それだけでなく、昔はストリートチルドレンだったのに、このおっさんの養子になったという少年少女たちが、入れ替わり立ち替わりやってきました。そして、エーコちゃんに向かって、「あの王さまの子どもにしていただいて、すんごいハッピー!」なんて言うのです。
そこでエーコちゃんは、自分もあのおっさんの娘になれたらいいなあと思うようになりました。でも、自分はダンスも踊れないし、敬語だって使えないし、テーブルマナーだって知らないし、とてもとても王さまの娘になる資格はないと思って、ちょっと尻込みするような気持ちになっていました。
すると、王さまは言いました。「そんなの気にすることはないよ。私はあなたが気に入ったんだ。ダンスやテーブルマナーなんて、これから覚えればいい。とにかく、私はあなたに私の娘になって欲しいんだ。これからずっとあなたと一緒にいたいと思ったんだ。だから、『娘になる』と言っておくれ」。
エーコちゃんは、「こんな礼儀も何も知らない私のままでいいのなら」と、すでに王さまのサインがしてある養子縁組の書類にサインをしました。
さて、身分上は王女さまになったエーコちゃんですが、ついこの前までストリートチルドレンでしたから、ダンスも、テーブルマナーもできないし、言葉遣いも昔のままです。
王さまは、それでも「エーコは、私の大切な娘だよ」と言い続けます。そして、抱きしめてくれたり、おいしい料理をごちそうしてくれたり、いろんな場所に連れて行って、驚くような体験をさせてくれたりします。
エーコちゃんは、「お義父さんは、私が王女さまらしいから愛してくれているんじゃなくて、このままの私を愛してくれているんだな」と理解し始めました。
王さまは、あるがままのエーコちゃんを大切にしてくれましたが、同時に「王女教育」も施してくれました。エーコちゃんのペースに合わせて、ダンスの仕方とか、言葉遣いとか、テーブルマナーとかを教えてくれたのです。王さま自身が教えてくれることもあるし、家来たちが分担して教えてくれることもあります。
最初は、慣れないので、なかなかうまくいきませんでしたが、何年かたつうちに、だんだんと王女さまっぽくなっていきました。
それでも、時には昔の癖が出てしまって、手づかみで料理を食べたり、べらんめぇ調のしゃべり方になったりしますが、それでも王さまはニコニコ笑いながら、「私は、あなたが私の娘としてふさわしい生き方を身につけようと、努力してくれているのがうれしいよ。時間はたっぷりあるから、何度でもやり直していいんだよ」と言ってくれます。
エーコちゃんは、自分がどんな状態でも、このままで王さまの娘なんだということを、日々確信し、感謝しています。そして、「だからこそ」、王さまの娘としてふさわしい存在になりたいと願い、日々努力しているのです。