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ショートエッセイ:中通りコミュニティ・チャーチ

絶対優しくなんかしてやらない

(2014年11月9日)

明子さんには、康代ちゃんという中学生のお嬢さんがいますが、不登校になってしまい、朝もなかなか起きられなくなってしまいました。また、最近何かにつけて反抗的です。

明子さんは、私と話し合いを続ける中で、お嬢さんに対して、充分な心の栄養(プラスのストロークと呼びます)を上げてこなかったということに気づかれます。プラスのストロークというのは、もらっていい気持ちになるような刺激のことです。優しく挨拶する、気持ちのいいスキンシップをする、抱きしめる、どんな時も(こちらの期待通りのことをした時だけでなく、いつも)「大好きよ」と言う、などです。

明子さんは、康代ちゃんにプラスのストロークをあげる決心をなさいます。特に、朝起こす時、がみがみ言いながら、まさに「たたき起こす」ようなことをしていましたが、それをやめて、ベッドサイドにしゃがんで、頭をなで、ほおずりしながら、「おはよう」と静かに優しく言う。そして、ぎゅ〜っと抱きしめながら、「お母さん、康代ちゃんが大好き」と言う。

ところが、1週間後、「できない」とおっしゃいます。そこで、こんな実験をしていただくことにしました。「私は、誰が何と言おうと、絶対に康代にストロークなんかやらない!」と何度も言っていただいたのです。「どうですか?」と尋ねると、「ぴったり来る」という答え。そう、できないのではなく、やりたくない自分がいるということに気づかれたわけです。

もちろん、ストロークを上げたいという気持ちも嘘ではありません。しかし、人間というのは、単純ではありませんから、やりたい自分の他に、やりたくない自分もいたりするものです。やりたいけどできない、やめたいのにやめられないというのは、そうしたくない別の自分もいるということです。

そこで、どうしてやりたくないのか、明子さんは考えました。すると、自分自身が、小さい時に家庭の中で心の栄養をほとんどもらわないできたということを思い出されます。「自分はもらってないのに、どうして娘にやらなきゃいけないのよ」と、どこかで思っているのです。嫉妬ですね。

明子さんは、イエスさまにお祈りなさいました。そして、家族には愛されたという実感をもらえなかったけれど、イエスさまが自分のことを命がけで愛してくださっているということが分かり、涙と共に「自分は愛されない子」という思いこみから解放されました。

その後、明子さんは康代ちゃんに、素直に愛情を表現できるようになりました。康代ちゃんもだんだんと元気を取り戻し、反抗的な態度も収まってくるようになりました。ある日、明子さんが風邪で一日寝込んでしまいまった時、何も言わないのに、康代ちゃんが洗濯や食事作りなどをやってくれたそうです。「私は康代が大好きです」と心から言える明子さんが、とても頼もしく見えました。そして、その背後から、誇らしげに明子さんを見つめておられるイエスさまの姿が見えるようでした。

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