見守る力、自立の力

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(2017.8.20)

Fさんは25才の女性ですが、ふるさと福島を離れて東京で生活しています。以前久しぶりにお会いしたとき、東京での様子を尋ねると、一人暮らしを始めたことで、今まで親に守られ、親に苦しみを全部引き受けてもらって生かされてきたんだということが、よく分かったとおっしゃいます。ただし、それは肯定的なニュアンスで語られた言葉ではありませんでした。

東京に行った当初は、仕事もなかなか決まらず、都会での人間関係にもなかなかなじめませんでした。そこで、しばらくは泣きながら眠りにつく日々を過ごしました。そんなとき、お母さんに電話をして弱音を吐くと、お母さんは心配をあらわにして、「そんなにつらいなら、すぐ帰ってらっしゃい」とおっしゃいます。するとFさんは、「お母さんに心配かけるから、がんばらなきゃ」と、つらさをぐっと押し込めて無理をしなければならなくなり、弱音も一切吐けなくなります。これが小さいときからのパターンです。これで、Fさんは心を病むくらい苦しんできました。

しかし、最近Fさんから送られてきたメールには、「生きるって本当に大変ですね」と書かれている一方、お母さんの態度が変わってきたということも書かれていました。Fさんの弱音を最後まで聴き、「お母さんには、話を聴くことしかできないけれど、いつでも連絡をちょうだいね」と励ましてくれるようになってきたというのです。

Fさんのお母さんは、Fさんの病気をきっかけに教会に通うようになり、イエスさまを信じました。そして、イエスさまとの関係を育てておられます。生きていれば、悩みや苦しみを避けることはできません。しかし、「自分と同じようにイエスさまを信じた娘には、すべてを益に変えてくださるお方がついているから大丈夫。娘は必ず苦しみから様々な宝物を引き出すことができる」と信じられるようになってきました。そして、Fさんの悩む力を信じて、黙って見守る力が養われているのです。

そして、Fさんが親元を離れて東京に行ったのは、自分の人生の課題を、親に肩代わりしてもらうのではなく、自分で引き受けるようになるためでした。Fさんが「生きるって大変だ」と言えるようになったというのは、自分の人生の悩みを自分で引き受けておられる証拠です。お母さんが娘を信じて任せ、見守る力を育てていらっしゃるのと同様、Fさんも着実に自立の力を育てていらっしゃいます。

そのことを指摘し、「思い切ってイエスさまとの二人暮らしを始めて、Fさんもすっかり成長したんだね」と返信すると、Fさんは「私もそう思う」とお答えになりました。背後で、イエスさまも誇らしげにうなずいていらっしゃるのが、一瞬見えた気がしました。

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