スクールソーシャルワーカーとは?
チーム学校の一員
最近、子どもたちに関わる問題が、複雑化・深刻化しているのは、保護者の皆さんも先生方も感じておられることと思います。そして、その問題の多くは、ただ単に子ども個人を指導・援助すれば解決するというものではありません。また、日本の学校では、授業以外にも、生徒指導や部活動、事務作業など、先生方に求められる業務が非常に多く、過重負担が問題になっています。
そこで、先生方が個別に教育活動に取り組むのではなく、管理職を含む他の先生方はもちろん、授業や部活動などをサポートする専門スタッフ、心理、福祉、法律といった分野の専門スタッフ、外部の専門機関などとも連携・協働しながら、学校全体として組織的に対応する体制が求められるようになりました。いわゆる「チーム学校」の考え方です。
チームの一員として学校に関わる教員以外の専門スタッフには、
- 心理に関する専門スタッフである、スクールカウンセラー
- 法律に関する専門スタッフである、スクールロイヤー(2018年春のドラマで有名になりましたね)
- 部活動に関する専門スタッフである、部活動指導員
- 英語教育に関する専門スタッフである、外国語指導助手(ATL)
- 図書に関する専門スタッフである、学校司書
- 情報通信技術を用いた教育に関する専門スタッフである、ICT支援員
などがいます。そして、
スクールソーシャルワーカーは、福祉に関する専門スタッフです。ソーシャルワークの理念や技能を用いながら、子どもの人権を守り、子どもにとって最善の利益を実現するよう努めます。
福祉とは
スクールソーシャルワーカーは、チーム学校の中の「福祉」の専門家です。「福祉」と訳されている英語の「welfare」は、元々「幸福」や「健康」を意味する言葉です。すなわち、人がより幸福になるための取り組み(特に日本では公的な取り組み)を福祉といいます。福祉的な関わりの目標は、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に「良好な状態」(well‐being)にあることです。
現代では、一部の社会的弱者のみを対象とした、救貧的・慈恵的な最低限度の生活保障サービスが提供されるだけでなく、人間的に豊かな生活の質(quality
of life)の達成を支援し、人権を保障するための多様なサービスが提供されるようになりました。そして、問題が起こってからの対応だけでなく、予防・促進・啓発といった、問題の発生や深刻化を防ぐ関わりも重視されています。
ですから、学校での教科教育や生徒指導なども、そして家庭での養育やしつけも、広い意味では福祉的な関わりと言えます。学校の先生方も保護者の皆さんも、実は福祉の専門家ですし、そうあることが期待されています。
スクールソーシャルワークの特徴
児童生徒の権利擁護
問題の当事者である児童生徒自身の権利をどうすれば最も良く擁護できるか、どうすることが彼らにとってより幸福につながることなのか、という視点で行動します。
自己決定の重視
「問題解決は、児童生徒、あるいは保護者、学校関係者との協働によって図られる」と考えます。ですから、「無知で非力な子どもを、賢く有能な大人が指導、教育する」という対応をしません。スクールソーシャルワーカーは問題解決の代行者ではなく、児童生徒の可能性を引き出し、自らの力によって解決できるよう支援しようとします。
ストレングス視点
そのため、問題をとらえるときには、マイナス面に焦点を合わせるのではなく、児童生徒や家庭や学校や地域がすでに持っているストレングス(長所、能力、資源、目標、希望などプラスの側面)を探そうとします。その際、使えるものは何でも使おうと考えます。そして、ストレングスをさらに高め、強める働きかけ(エンパワメント)を行なおうとします。
生態学的(エコロジカル)な視点
そして、問題を「個人の病理」としてとらえるのではなく、児童生徒が属する集団、社会システム、さらには自然までも含む「環境との不適合状態」としてとらえようとします。別の言い方をすると、表面的に起こっている課題そのもの(たとえば不登校とか非行とか怠学とか虐待とか)だけを見るのではなく、それを生み出している背景も見つめようとするということです。
ですから、対応としては「個人と環境の双方に働きかける」スタンスを取ります。すなわち、「不適合状態に対処する個人の力量を高めるよう支援する」と共に、「環境が個人のニーズに応えることができるよう調整する」ということです。たとえば、
- 子どもや保護者や教職員に対し、学校内外のいろいろなサポート資源を紹介します。
- 地域の専門機関に情報提供するなどし、困っている子どもや保護者への関わりをサポートします。
- 場合によっては、新しいサポート資源を生み出す働きかけをします。
- 児童生徒・保護者・学校の間に立って、互いの気持ちを代弁したり、話し合いの場を設定したりするなど、関係の仲介・調整を行ないます。
働きの四つのポイント
山口県教育委員会が発行したSSW実践事例集に、スクールソーシャルワーカーの働きを説明するための四つのポイント(かかわる・つなぐ・ひらく・みまもる)が紹介されています。
「かかわる」とは
学校だけで課題を解決することが困難な事例に対し、スクールソーシャルワーカーが支援に介入することを表します。
「つなぐ」とは
スクールソーシャルワーカーが専門的な知見をもつ関係機関のパイプ役となり、児童生徒及びその家庭を支えるネットワークを構築すること、あるいは課題の解決に向けて保護者と学校との関係を再構築することを表します。
「ひらく」とは
校内の関係者による校内ケース会議や関係機関を集めて行う連携ケース会議(以下、ケース会議)での支援方針や支援目標を基に、課題を抱える児童生徒及びその家庭への支援を開始することを表します。
「みまもる」と は
学校を中心とした関係機関が共通理解を図りながら経過を見ていくこと、あるいは支援が適切に行えているか、また支援が機能しているかについて、評価・改善することを表します。
お気軽にご相談を
……というと、なんだか難しそうですが、保護者の皆さんにとっては、「カウンセラーと同じようなもの」と考えていただいて、子育てや教育に関する悩みがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。相談は無料ですし、もちろん秘密は厳守します。
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