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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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ありがとうの力


2016年6月号
これまでいろいろなご家庭や団体、企業などを見てきましたが、メンバー同士がお互いに感謝し合っているグループは、間違いなく一人一人が生き生きと輝き、また多くの良い結果を残しています。

「ありがとう」の反省会

あるハワイの公益団体の話です。その団体では、貧困、虐待、差別などの問題を抱えたり、道徳的に問題のある生活を送っていたり、そのほか様々な悩みを抱えたりしている人たちを支援していますが、みんな生まれ変わったように生活が一変し、今度はメンバーの一員となって他の人たちを援助する働きをするようになっていきます。

以前、この団体のリーダーであるウェイン・コデイロ氏が来日されたとき、2泊3日の講演を聴きに行ったことがあります。コデイロ氏は、フラダンスや音楽のチームと共に来日されており、講演の合間には、ダンスと音楽のチームがパフォーマンスを披露してくれました。コデイロ氏の講演もさることながら、私はダンスや音楽のチームのパフォーマンスにも感動しました。彼らもまた、過去は様々な問題を抱えていた人たちだということでしたが、実に生き生きと輝いて見えたのです。

その秘密を、通訳者が教えてくれました。1セットの講演とパフォーマンスが終わると、コデイロ氏やチームのメンバーが舞台のそでに集合し、反省会を開きます。ところが、普通だったら、問題点を出し合って、「次は気をつけよう」というふうに終わるのが反省会ですが、彼らのはそれとは全く違います。
「ベティ! あなたのギターソロは最高だった。おかげで、ベースを気持ちよく弾くことができたよ。ありがとう!」

「サム! 私がステップをミスして転びそうになったとき、あなたがサポートしてくれたから、その後パニクらないでダンスを続けられたわ。ありがとう!」

「スティーブさん! 初めてのこの会場で、大きすぎも小さすぎもない、絶妙の音量になるようにBGMのボリュームを調整してくれて、ありがとう。とても踊りやすかった!」
そんなふうに、全員が感謝の対象になったら、それで「よし、次もこの調子でいこう!」と言って反省会が終わります。

良かった!

どうしてそんなふうに互いに感謝し合うことを大切にするようになったのか。その秘密をコデイロ氏が教えてくださいました。

コデイロ氏は、元々シンガーソングライターでした。そして、あるとき、大きな集会で歌うよう依頼されます。ところが、有名人がずらりと並んでいるのを見て、一瞬にしてあがってしまい、歌詞がすっかり飛んでしまいました。でも、すでに演奏は始まっていますから、今さらやり直すこともできません。そこで、コデイロ氏は、その場で適当に歌詞を作りながら1番をやり過ごしました。すると、だんだん落ち着いてきて、2番以降は問題なく歌い切ることができました。しかし、若きコデイロ氏はすっかり落ち込んでしまいました。

集会後、主催者のリーダーが彼に声を掛けました。「君、あがってたね。1番は、その場で歌詞を作って歌っていたでしょう?」。うわぁ、ばれてる! これは叱られるなと覚悟したコデイロ氏ですが、次に起こった出来事に、我が目を疑いました。そのリーダーは、コデイロ氏の手をがっちりと握りしめ、

「いやぁ、良かった! 今日僕は、いったん尊い仕事を始めたなら、何があっても途中であきらめないという姿勢を、君に教えてもらった。ありがとう!」
と、そう何度も語ったのです。

コデイロ氏はおっしゃいました。今の団体の働きを初めて、いろいろ壁にぶつかったり、誤解されて攻撃されたり、裏切られたりして、もうこんな働きはやめてしまおうかと思ったことは何度もある。でも、あのときの「ありがとう」という言葉と握手の手のぬくもりを思い出して、今日まで続けることができたのです。そして、自分が「ありがとう」の力を自分が体験したことで、他の人たちにもその力を体験して欲しくて、「ありがとうの反省会」を始めたのです、と。

「ありがとう」が飛び交う家庭やクラス

「ありがとう」が飛び交う家庭やクラスや組織は、きっとすてきな集団になります。では、どうしたらそういう集団に変えることができるでしょうか。それは「お互いに感謝しなさい」とメンバーに命じる前に、まずあなたが家庭やクラスや組織のメンバーたちに感謝を言葉で表すことです。

あなたの家族一人一人について、感謝すべきことを10個挙げてみてください。そして、それを本人たちに直接伝えてみてください。きっと、何かすてきなことが始まります。

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福島県大玉村
スクールソーシャルワーカー
増田泰司(ますだたいじ)

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