2017年6月号
「丸い卵も切り様で四角、物も言い様で角が立つ」ということわざがあるように、言い方一つで、こちらが意図していない受け取られ方をしてしまい、もめ事に発展してしまうことがあります。言葉は本当に難しいですね。今回は、反発を招きにくい言い方の一つを紹介しましょう。
決めつけられると反発する
人は自由でありたいと思っていますから、他人から考えや価値観を押しつけられたり、自分の考えや気持ちを頭ごなしに否定されたりすると、反発を感じます。
たとえば、暇さえあれば絵を描いていて、ちょっと宿題や予習復習がおろそかになっているお子さんがいるとします。もし親が「絵なんか描いても、将来役に立たない。そんな暇があるのなら、しっかり勉強して、いい学校に入って、いい会社に入らないと」というふうに、決めつけるような言い方をしたらどうなるでしょうか。お子さんは、自分の趣味や興味や考えや意見を封じ込められたような気持ちになるでしょう。当然、反発します。
何が問題なのか
「絵なんか描いても、将来役に立たない」というのは、科学的に証明された真理であるかのように語られていますが、これは親の主観です。役に立つかどうかは、この時点では誰にも分かりません。
実は、私たちが「これは事実だ」と主張することのほとんどは、「これが事実だ……と私は思う」という、こちらの主観、あるいは願望や理想ではないでしょうか。そこで、
人に意見を言うときには、これは自分の考えや気持ちなのだということを認めた上で主張する「意見言葉」を使ってみましょう。その方が反発を招きにくく、受け入れてもらいやすいようです。
事実言葉と意見言葉
事実言葉
事実言葉とは、それが間違いのない事実であるかのような言い方、まるでそうするのが当然だと言わんばかりに押しつけるような言い方のことです。たとえば、
- 「〜だ」
- 「〜なんだ」
- 「〜なものよ」
- 「〜に決まっている」
- 「〜でしょう?」
- 「どうして〜しないの?」
- 「あなただって〜だと思うでしょう?」
意見言葉
意見言葉とは、「これは私の意見(考え、主観、願い、気持ち)に過ぎないけれども」というようなニュアンスの言い方です。あるいは、「そういう意見を言う人たちがいる」というような言い方です。たとえば、
- 「私は〜だと思う」
- 「私は〜だと感じる」
- 「私は〜だと思うんだけれど、あなたはどう?」
- 「私は〜して欲しい」
- 「〜して欲しくない」
- 「私は〜してもらえると嬉しい」
- 「〜されると悲しい」
- 「これは私の意見に過ぎないのだけれど……」
- 「私はこう思うんだけれど……」
- 「〜というふうに聞いている」
- 「〜という意見を聞いたことがある」
もちろん、相手をほめるような場合には、「あなたの持ち味は、粘り強いところだよ」というふうに、確信を持って言い切ることが大切でしょう。しかし、こちらの意見を伝えるときには、できるだけ事実言葉ではなく、意見言葉で伝える方がいいかもしれませんね。
先ほどの、暇さえあれば絵を描いていて、勉強がおろそかになっているお子さんに対して、親が意見を言う場合は、たとえばこんなふうに伝えることができます。
絵が好きなんだね。あなたが楽しそうに描いているのを見ると、お父さん/お母さんもうれしいよ。でも、たとえば将来あなたが絵を描くのを生かせるような仕事をしたいと思って、なりたい仕事が見つかったのに、学力がついていかないから選べないということになったら、とても悔しいよね? だから、学校の勉強も一生懸命にやった方がいいんじゃないかって、お父さん/お母さんは思うよ。あなたはどう思う?
皆さんも、お子さんに対して何かを伝えるとき、「意見言葉」を心がけてみてください。反発を招きにくいというだけでなく、お子さんが自分の頭で考えて決断する、自立に必要な力を養うことにもつながるでしょう。