2017年12月号
皆さんには、「憧れのヒーロー、ヒロイン」がいますか? 皆さんだけでなく、きっと子どもたちにもそれぞれ憧れの人がいることと思います。今日は、憧れの人を使ったやる気の引き出し方を紹介しましょう。
憧れの人の影響
私は、中学生時代から、シンガーソングライターさだまさしさんの大ファンです。美しいメロディもさることながら、短編小説を読むような詞の世界に感銘を受けています。
さださんは、生きとし生けるものすべて、特に生きるのが下手な人、つい後ろ指を指されるような生き方をしてしまう人、人間関係が不器用な人に対して、責めたり馬鹿にしたりするようなまなざしではなく、温かい慈しみのまなざしを向けています。私がさださんの歌を聴いて、いつも感動するポイントはそこです。
私が心理学などを学び、援助職を目指そうと思ったのも、(そのときは意識していませんでしたが)さださんの、人へのそのまなざしの影響が大きかったと思います。今でも、人を見るとき、「さださんだったら、この人をどんなまなざしで見つめ、評価するだろうか」と考えることがあります。すると、相手を低く見積もったり、つい上から教えてやろうとしていたり、相手に対していらだちを感じていたりする傲慢な自分が見えてきて、軌道修正しなければという思いになります。
人は、尊敬する人の話を聞き入れ、その行動を真似しようとする
アメリカでティーンエイジャーの薬物依存撲滅運動を行なっている、プロバスケットボール選手の話を聞いたことがあります。彼はこう言いました。「親や教師がクスリはやめろと言っても聞かない子どもたちでも、僕たちプロスポーツ選手がやめた方がいいと言うと聞いてくれるんだ」。
キリスト教国では、WWJDというロゴの入ったブレスレットや指輪をつけるのがちょっとはやっているそうです。「What Would Jesus Do?」(イエス・キリストだったらどう行動するだろうか?)の略です。
人は、尊敬し、憧れている人の話は真剣に耳を傾けるし、そのアドバイスや指示に従いたいと強く感じるものです。そして、その人の行動を自分も真似たいと思うようになります。
この性質は、自分や大切な子どもたちのやる気を引き出し、根気を育てるのにもっと利用できるのではないでしょうか。
あなたの憧れの人は?
子どもたちに使う前に、まずご自分で考えてみましょう。性格の面でも仕事の面でも趣味の面でも、どの側面でもかまいません。あなたの憧れの人は誰ですか? 別に、同じ性別や同じ職業の人でなくてもかまいませんよ。あなたが尊敬し、憧れ、「自分もああなれたらいいな」と思う人をイメージしてみましょう。
それから、以下の質問に答えてください。
- 壁にぶつかったり、悩んだりしていることがありませんか?
- その問題について、あの憧れの人に何でも質問できるとしたら、何を尋ねますか?
- その人は、その質問に対してどんなふうに答えてくれると思いますか?
- その人があなたと同じ状況に置かれたら、今どんな行動を取ると思いますか?
やってみましたか? きっと、一人で悶々と悩んでいたのでは感じられなかった希望とか、やる気とか、アイディアとかがわいてきたのではないでしょうか。
お子さんともやってみましょう
もしそうだったら、それをぜひお子さんにも分かち合ってみてください。そして、お子さんの憧れの人を尋ねてください。お子さんは、どうしてその人のことが好きなんでしょうか。特にどこに魅力を感じているのでしょうか。もしその人のようになれるなら、特にどういう点を真似したいと思っているでしょうか。
それから、上述の質問をしてみてください。最後に楽しい気分になることが、やる気や根気を生み出す上で大切なので、真剣にやり過ぎないで、ゲーム感覚で楽しく話し合えるといいですね。
もちろん、この方法は部活動や職場などでも使えますよ。スポーツチームや企業などで行なわれているメンタルトレーニングでは、「
ロールモデル思考法」と呼ばれ、よく用いられるスキルの一つです。ぜひお試しあれ。