2018年2月号
「怒ると叱るは違う」などと言います。叱るのは教育活動ですが、怒るだけではこちらが本当に伝えたいことが伝わらず、ただお互い嫌な気持ちになるだけに終わってしまうことが多々あります。それでも、子ども(や配偶者や部下など)の言動に思わずカーッとなってしまうことがありますね。
そんなときどうしたらいいか、先日NHKのテレビ番組「偉人たちの健康診断」で
アンガーマネジメント(怒りを上手にコントロールする方法)の専門家が話をしておられました。その内容を、私なりに咀嚼・加味して紹介します。
6秒待つ
怒りを覚えると、血中にアドレナリンが放出され、全身を駆け巡ります。これは、すぐに戦いを始められるよう備えるためです。そんな状態で口を開けば、当然相手を攻撃するような言い方になってしまいがち。ですから、いったん落ち着く時間が必要です。
血中のアドレナリン濃度が落ち着くのに6秒かかるそうです。そこで、
最低6秒は怒りを表さないよう我慢します。そして、その間に、以下のようなポイントについて考えます。
べきの分類
人が怒りを覚えるのは、自分が「こうあるべきだ」と思っていることを、相手がしない場合です。たとえば「親に声をかけられたら、すぐにゲームをやめ、宿題に取りかかるべき」なのに、何度声をかけても子どもがゲームをやめないと、カーッとなります。
ここで、相手の言動を3つに分類してみます。
- 自分の「べき」と一致。
- 少し違うが許容範囲。
- 絶対に許せない。
3番に属する言動(自分や他人の生命、心身、財産などに取り返しのつかない悪い結果を招くような言動)ならば怒りを覚えて当然ですが、実は案外2番に属する言動の場合も多いものです。そういうものまで怒っていると、相手は萎縮したり、「またいつものことだ」とかえって軽くとらえたりするでしょう。そこで6秒使って分類してみるのです。
リクエストの言い方に翻訳する
それから、2番(すこし違うが許容範囲)に関して、相手にどういう伝え方をしたらいいか考えます。怒りをぶつける目的は、相手に言動を改めてもらいたいためです。ところが、怒りのあまり攻撃的な言い方をしてしまうと、相手はただ「攻撃された」「嫌われた」と思うばかりで、こちらが本当に伝えたいことが全く伝わらない恐れがあります。避けた方がいい言い方の例としては、
- 過去をむしかえす
-
「前にも言ったけど」「あの時もそうだったけど」
- 尋問調
-
「なんでそんなことするの」「どうして〜しないの」
- 決めつけ
-
「いつもそうだけど」「絶対やらないよね」「必ずこうなるんだから」
- 曖昧
-
「ちゃんと」「しっかり」「普通は」……人によって程度の解釈が違う
怒りは、リクエストの裏返しです。ですから、「今度は、○○して欲しい」という
リクエストの形でストレートに表現しましょう。その方が、ずっと相手に伝わりやすいし、相手の言動を変えやすいです。皆さんだって、怒鳴られたり「今度やったらひどい目に遭わせるぞ」と脅されたりして、無理矢理行動を改めさせられるより、お願いされるほうがいいでしょう?
普段から言葉遣いに気をつける
とはいえ、怒ることが癖になっていると、6秒待つとか、怒りをリクエストの形に翻訳するとかいうことさえできず、気がついたら怒りをぶつけてしまうなんてことも起こります。そこで、普段から言葉遣いに気をつけることで、怒り癖を抑制しておきましょう。
専門家によれば、
怒りっぽい人は普段から言葉遣いが汚いそうです。相手を呼ぶ際に「お前」「てめぇ」と言ったり、「さっさと○○しろよ」とか「○○してんじゃねぇよ」というようなきつい命令口調を使ったり、人に向かって「馬鹿」「間抜け」「グズ」などというような人格を否定するような言葉を投げかけたり……。
そういう汚い言葉は、自分の心にも作用し、アドレナリンを放出します。それが癖になると、簡単にアドレナリンが放出されるようになり、ちょっとしたことにもキレてしまうようになるのです。ですから、普段の言葉遣いにも気をつけてみましょう。
もちろん、子どもたちの言葉遣いにも気を配り、指導しなければなりませんね。