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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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〒969-1302 福島県安達郡大玉村玉井西庵183

探してでも


2020年3〜5月合併号
遅くなりましたが、お子さんのご入園、ご入学、ご進級おめでとうございます。大玉村教育委員会所属のスクールソーシャルワーカー、増田泰司(ますだたいじ)です。皆さまの子育てや教育をお手伝いしています。

3月以降断続的に臨時休校が続いたため2ヶ月間発行が滞ってしまいましたが、月1回(8月を除く)、こうして「スクールソーシャルワーカーだより」を発行して、子育てや人間関係や仕事などに役立つお話をさせていただきます。質問・感想・相談は大歓迎です。こちらのメールフォームからどうぞ(情報が保護されます)。

ほめちぎる教習所

私が自動車免許を取ったのは、かれこれ30年以上前のことです。その頃の自動車教習所というのは、教官にいろいろ嫌みを言われたり怒鳴られたりしながら技能教習を受けたものです。当時の私は「言われてすぐ完璧にできるくらいなら、最初から教習所に来るもんか!」と心の中で悪態をつきながらハンドルを握っていたものです。ところが、今はかなり雰囲気が変わっているようですね。

特に今年の1月7日に放送されたTBS系列番組「この差って何ですか?」で紹介されていた、三重県の南部自動車学校は格別です。ここは教習所全体で「ほめちぎる教習」に取り組んでいます。たとえば生徒が教習所内を運転中に脱輪したとき、教官は脱輪したことを責める代わりにこんなふうにほめます。「実際の道路上で脱輪したときには、すぐ車を停めることが大切です。だから今、すぐにブレーキを踏んだのはとても良い対応でしたね。」

そして、「ほめちぎる教習」を始めてから、卒業生の事故率が以前の半分になったそうです。事実、ほめることを意識した教育はダメ出しばかりする教育よりも効果があることが、様々な研究で分かっています。ほめられると、ほめてくれる人の期待に応えたいと思うようになります。そして、自信がついて「もっとがんばろう」という積極的な気持ちになります。さらに、「へまをして叱られるのではないか。笑われるのではないか」という変な緊張から解放されて、のびのびと練習や勉強などができるようになります。その結果として、望ましい行動が身につき、そのパフォーマンスも向上します。

これは自動車教習所の生徒だけでなく、中学生以下の子どもたちにも通じます。効果があるなら是非使ってみたいですね。ダメ出しは、する方も精神的にイライラして疲れてしまいがちですし。

ほめればいいってものでもない

ところが、最近再注目されている心理学者アルフレッド・アドラー(1870-1937)は、「子どもはほめて育ててはいけない」と語っています。もう少し正確に言うと、彼が戒めているのは、子どもが大人の期待通りの行動・気に入る行動をしたときだけ、「ごほうび」としてほめるようなやり方です。

大人が気に入る行動をしたときだけほめられて育つ子どもは、いくらほめられても「大人の期待通りに行動できなかったときや、逆に大人が気に入らない行動をしたりしたときは、無視されたり嫌みを言われたり怒鳴られたりするはずだ」と恐れて、前述のようなのびのびした精神状態や積極的なやる気を持つことができません。

それどころか、そのうち「周りの大人は僕が好きなんじゃなくて、本当は100点の答案や優勝メダルが好きなんだろう?」と思うようになり、自分を大切にしてくれない大人(とその子は誤解しているわけですが)に対して、まるで復讐するかのように反抗的・攻撃的な態度を取るようになる場合もあります。

南部自動車学校の教官たちは、もちろん生徒たちに対して「こういう運転をして欲しい」という期待、運転者としての理想像を持っています。そうでなければ教育は成り立ちません。しかし、その期待や理想に合わない部分に注目するよりも、ほんの少しでも望ましい行動を見つけて、それを具体的に指摘して認めたりほめたり感嘆したりしています。

そして、そうやって望ましい部分を認めた上で、「じゃあ、今度はカーブですぐにハンドルを切らないで、この辺まで車体が進んでからゆっくりハンドルを切ってみよう」と修正のメッセージを送ります。すると生徒も「そうしよう」と前向きに捉えることができるし、その後何度か失敗したとしてもあきらめずにチャレンジし続けることでしょう。自信とやる気を受け取っているからです。

意識して探しましょう

そこで、お子さんの多少の不適切な行動はあえて無視して、むしろ望ましい行動を意識して探しましょう。100%こちらの期待通りの行動ではなく、ほんの少しでも望ましい行動ならそれを指摘して、ほめたり認めたり感動したり喜んだりしましょう。そういう望ましい行動を見つけるには、努力して、一生懸命に探す必要があります。しかし、皆さんのその努力は、必ず実を結びます。

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福島県大玉村
スクールソーシャルワーカー
増田泰司(ますだたいじ)

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FAX.0243-48-2909