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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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〒969-1302 福島県安達郡大玉村玉井西庵183

内側からあふれ出るやる気


2020年7月号
前回と前々回は、「ほめる」ということについてお話ししました。今日はその関連で「ごほうび」について触れます。望ましい行動をしたり良い結果を出したりしたときのごほうび。ますますやる気を生み出す効果がありそうですし、それを狙って与えることが多いですが、使い方を誤るとかえってやる気を損ねてしまいます。今日はそんなお話です。

バレーが喜びだったのに

女子バレーボールの元日本代表、大山加奈さんが、ご自分のインスタグラムにダイレクトメッセージをくれた高校3年生の言葉にショックを受けたと語っておられます。この子は、新型コロナ対策のためにインターハイが中止になったことに触れ、「正直、ほっとしている自分がいます」と語っています。大好きで始めたバレーなのに、いつの間にか試合に勝たなければ、優勝しなければという重圧に押しつぶされそうになり、いつも「負けたらどうしよう」「ミスしたらどうしよう」という負の感情に満たされるようになっていたから、それから解放されたと。

大山さんがツイッターでこの話を紹介すると、多くの現役中高生や元中高生たちから「私だけじゃなかったんだ」と同調する声がたくさん返ってきました。こんな思いをする子どもたちをこれ以上増やしてはいけないと、大山さんはネットを使った「オンラインエール授業」など、子どもたちにバレーをすることそのものが喜びだった心を思い出してもらう活動を行うことを決めました。

2つの動機づけ

人に行動を起こさせたり、目標達成に向かって努力や工夫をし続けさせたりする心の働きを「動機づけ」(モチベーション)と言います。意欲、やる気、根気などの意味で用いられることもあります。動機づけには2種類あって、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」です。

外発的動機づけとは

これは、他の人から目的や目標を与えられ、他の人からやる気などを引き出してもらうタイプの動機づけです。典型的にはアメとムチ、すなわち報酬や罰則を遣います。たとえば「先生にほめられたいからがんばろう」とか「お父さんに怒鳴られたくないからやめておこう」とか「ごほうびのお金が欲しいからやろう」とかいうのは、外発的動機づけが働いているということです。

内発的動機づけとは

これは、それをすることそのものが楽しいとか充実感があるとかいう、その人の内側から自然に湧き上がってくるタイプの動機づけです。たとえば「算数の問題が解けると楽しいから勉強する」とか「漢検の級が上がるとうれしいから書き取りをがんばる」とか「バレーボールが好きだから厳しい練習に耐える」とかいうのは、内発的動機づけが働いているということです。

内発的動機づけを心がけましょう

外発的動機づけは内発的動機づけを引き出すよりも簡単だし、すぐに効果が現れやすいので多用される傾向にあります。ところが、安易に外発的動機づけに頼るのは、かえって相手からやる気や根気を損なわせる結果になる場合があります。この心のカラクリを「アンダーマイニング効果」と呼びます。

たとえば、こどもに「お風呂掃除をしてくれたらお小遣いとして50円あげる」と約束したらどうでしょうか。すると、小遣いをもらえない他の家事手伝いはしなくなります。そのうち、100円、200円と値上げしてくれなければお風呂掃除もしなくなります。そして、小遣いをくれる人の指示やお願いは聞くけれど、くれない人の言うことは聞かなくなります。

一般に、外発的動機づけよりも内発的動機づけの方が、より強力に行動を引き出し維持すると言われています。ですから、勉強にしても、家事分担にしても、部活動にしても、友だち関係にしても、「そうすることがうれしい」「楽しい」「誇らしい」という思いを持ってもらうよう工夫できるといいですね。私がオススメする方法は「感謝する」ことと「一緒に喜ぶ」ことです。

たとえば子どもが、自分が食べ終わった食器を片付けたとき、当たり前だとスルーしたり「よくできたね」とほめたりする代わりに、「助かるよ、ありがとう」と感謝するのです。あるいは、たとえば子どもが前回よりも算数の小テストで良い成績を収めたとします。ごほうびに小遣いを渡す代わりに「今回あなたががんばって勉強している姿を見られて、お父さんもお母さんもうれしいよ!」と一緒に喜ぶのです。そうすることで、子どもはそれを行うことそのものが喜びとなります。

内発的動機づけに有効な方法がもう一つありますが、それは次号で紹介しましょう。

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増田泰司(ますだたいじ)

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