2020年9月号
前回、内発的動機づけについてお話ししました。他の人からごほうびや罰を使ってやる気を引き出してもらう外発的動機づけに比べ、自分の内側から「やりたい」「やらなきゃ」というふうに湧き上がる内発的動機づけの方が強力だと申し上げました。そして、子どもたちから自ら内発的動機づけを行なう力を引き出すため、「感謝する」ことと「一緒に喜ぶ」ことを紹介しました。今回は、別の方法を紹介します。それは、
お子さんに「自分で目標を立てさせること」です。
目標設定
目標を立てるときには期限を区切った方がいいので、ひとまず「今年中に達成したいこと」をお子さんに尋ねてみましょう。
その際、お子さんが口にした目標が、「算数をがんばる」「弟に優しくする」など「態度」の目標になっていないかチェックしてあげましょう。態度の目標を立てることも大切ですが、それだけだと目標が達成できたかどうかの判定が、評価する人の気分によって変わります。そこで
「行動」の目標になるよう導いてあげてください。その態度が身についたと言えるためには、どういう行動ができるようになっていればいいかを考えさせるのです。
行動の目標とは、「○○の行動をする」「○○ができるようになる」という形の文章、あるいは達成する数値が入っている文章の目標です。たとえば「毎日、朝食と夕食で自分と家族が食べた食器をシンクに運ぶ」とか「九九の7の段を間違えないで3回言えるようになる」とか「50メートルを9秒台で走る」とかいう目標なら、誰がどんな気分で判定しても達成できたかどうか分ります。
小さな成功体験を積み重ねる
やる気を維持するには、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。高い目標を立てるのは素晴らしいですが、あまりにも高すぎて達成までに長い間大変な努力が必要だったり、うまくいかないことが続いたりすると、途中で飽きたり諦めてしまったりする恐れがあります。
よい目標は、努力すれば必ず達成できる目標です。そこで、お子さんがちょっと難しそうだなという高い目標を口にした場合には、一旦それを認めた上で、「それができるようになるためには、最初に何ができるようにならないとダメかなぁ?」と尋ねるなどして、「ちょっとがんばればできる手頃な目標」を考えさせましょう。
そして、それができたら次、さらにそれもできたら次と、だんだんステップアップしていって、最後に元々の高い目標が達成できるように道筋を作るのです。
注意事項
批判・修正・強制しないこと
その際、「そんなつまらない目標を立てるんじゃない」とか「ゲームのスコアじゃなくて、お勉強の目標にしなさい」とかいうふうに、皆さんの価値観でお子さんの目標の内容を批判しないでください。
内発的動機づけの力は、自分でやりたいことややらなければならないと思っていることを目標にすることで養われます。他の人から与えられた目標では意味がありません。お子さんが目標を口にしたら、まず「いいね!」 そして、行動目標になっているか、期限が設定されているかをチェックしたら、さらに「いいね、がんばろう!」と励まします。
達成できたら一緒に喜ぶこと
ほめるより一緒に喜んだ方がエネルギーになります。
達成できなくても次につなげること
達成できなかった場合にも、努力していたことを認めて「そのがんばりはうれしい」と喜ぶこと。そして、どうして今回は達成できなかったか考えさせます。さらに、それを踏まえて今度はどんな工夫ができるか考えさせます。場合によっては、「小さな成功体験」の項目でお話ししたように、少し目標のレベルを下げるのもかまいません。それから、またチャレンジしてみようと励まします。
皆さんも一緒に
お子さんに目標を立ててもらうときには、皆さんも一緒にご自分の目標を立ててみてください。そして、「お父さん、お母さんと一緒にがんばろう」と、お互いに励まし合えれば素晴らしいです。