2020年10月号
福島県の公式サイトに、「『こまったな』と思ったら“SOS”を出してみよう」という小冊子がアップされています(
こちらで読むことができます)。対象は小学校高学年から中学生ですが、大人が手助けしてあげれば下の年代の子どもたちにも有効です。県教育委員会では学校での活用を勧めていますが、よかったら保護者の皆さんも読んでみてください。
今回はこの小冊子の内容そのものではなく、そこで使われている「
尺度化」の技法について紹介します。
尺度化
この小冊子には、自分の心の元気度を、
- 晴れ(元気度80〜100%)
- くもり(元気度50〜80%)
- 雨(元気度30〜50%)
- 大雨(元気度0〜30%)
に分けて表現する方法が紹介されています。
気持ちやストレスのような目に見えないものや複雑なものを、人に分かるように伝えるのは大変です。そういうものを目に見える尺度(計算や評価の基準)で表現することを尺度化と言います。もちろん、その尺度は心のすべてを表しているわけではありませんが、他の人がその人の気持ちを理解する助けにはなります。
また元気度について書かれている同じページに、不安やストレスが続いたときに心身にどのようなサインが現れやすいかという例が挙げられています。このように例が挙げられていると、自分や他の人が不安やストレスを抱えているかどうか判断しやすくなります。ですから、これなども広い意味での尺度と言えるでしょう。
子どもは必ずしも自分の心身の状態を他の人に分かるように伝えることができません。大人でも、悩みや痛みが大きいときには難しい場合があります。ですから、このように心や体の状態を数値で表したり例を挙げたりして選んでもらうことで、理解を深めることができます。
声の大きさの尺度化
幼稚園や保育所、あるいは小学校低学年のクラスでは、場にそぐわない大声または小声で話す子どもがいるものです。そんなとき「うるさいですよ」とか「もっと大きな声で」とか伝えても、子どもは実際にどれくらいの音量で話せばいいのか感覚的に分からないことも多いです。そこで、よく「声の大きさの尺度」が用いられます。それは下図のようなものです。
まず0〜4番がそれぞれどれくらいの音量なのかを何度も練習しておきます。その後、場にそぐわない大声あるいは小声で話す子どもたちがいたら、「今は1番の音でお話ししようね」などと声かけをするのです。もしくは、それぞれの活動前に「これから発表だから、発表する人は3番の声でお話ししようね」とあらかじめ意識させます。これは家庭でも使えますね。
目標の尺度化
尺度化は目標設定でもよく用いられます。前回も申し上げましたが、たとえば「算数をがんばる」よりも「九九の7の段を間違えないで3回言えるようになる」の方が良い目標です。達成できたかどうかが客観的に判断できるからです。
学習や50m走の成績のような数値で表しやすい目標だけでなく、「友だちに優しくする」というような態度の目標も工夫次第で尺度化できます。
「友だちに優しくする」の場合には、まず「友だちの○○ちゃんに対して全然優しくない状態を0点、最高に優しい状態を100点として、今は何点だろうか」と尋ねます。そして、「そこから10点プラスしたあなただったら(別に5点でも1点でもかまいません)、○○ちゃんにどんな行動をするだろうか」と尋ねます。そうやって出てきた答えが当面取り組むべき目標です。
尺度化してみましょう
こちらの気持ちや願いを分かってもらうのは大変ですし、相手の気持ちや願いをくみ取るのも大変です。特に相手が子どもであればなおさらです。そんなときは、尺度化してみてください。