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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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みんな注目されたい


2021年1月号
1970年代・80年代に活躍したバリー・マニロウというアメリカの歌手がいます。日本でも「コパカバーナ」などのヒット曲で知られています。彼の名前が付いた「バリー・マニロウ実験」という心理学の実験がありますが、今日はその話から。

バリー・マニロウ実験

これは、2000年にアメリカのコーネル大学のトム・ギロビッチ博士が行なった実験です。大学生の「観察者」グループの中に、1人だけバリー・マニロウの顔がプリントされたTシャツを着た「被験者」を紛れ込ませます。

かつては全米で熱狂的な人気を博したマニロウですが、2000年当時そういうシャツを公の場で着るのは、いわゆる「ダサい」と思われるような行為だったそうです(よく考えたらマニロウさんにとってかなり失礼な実験ですね)。

しばらく一緒に過ごした被験者が退出すると、被験者と観察者グループの人たちそれぞれにアンケートを採りました。
  • 観察者には、「あなたは被験者のシャツのプリントを意識したか」という質問
  • 被験者には、「観察者のうちどれくらいの人があなたのシャツのプリントを意識したと思うか」という質問
です。

こういった実験を、人を変えて何度も行ないました。その結果は、被験者の「他の人は自分のダサいシャツを意識したに違いない」という予想の方が、観察者たちの「あの人のダサいシャツを意識したよ」という実際の結果よりもはるかに多かったということです。

この実験が示しているのは、「自分が思っているほど、他の人はあなたのことを気にしていない」ということ。私たちは、「こんなことをしたら、他の人にどう思われるだろうか」と気にして悩むことがありますが、実際には他の人にとって私たちの行動なんか結構どうでもいいということです。なんだかがっかり半分、安心半分の結果ですね。

逆に言うと

バリー・マニロウ実験は、次のような真理も私たちに教えてくれます。それは、「みんな注目されたいと思っている」ということです。

でも、あなたの話を素直に、そして真剣に聞いてもらうためには、まず相手に好かれたり信頼されたりする必要があります。あなたも、好きな人や尊敬している人や恩義を感じる人のお願いなら喜んで聞きたいと思うけれど、嫌いな人やあなたに迷惑ばかりかける人の話を聞きたいとは思わないでしょう?

人間に「注目されたい」という基本的欲求があるのだとすれば、それに応えてあげれば好感度がアップすると予想できますね。もしも、他の人のプラスの行動を積極的に見つけて肯定的に反応すれば、相手は大変喜び、あなたとの関係が向上するはずです。そして、今度はあなたの話に真剣に耳を傾け、あなたのために一肌脱ぎたいと思ってくれることでしょう。

もちろん、相手が子どもの場合も同じです。

肯定的な反応とは

「他の人のプラスの行動に肯定的に反応」というと、典型的には「ほめる」という行為を思い浮かべます。ただし、ほめるというのは立場が上の人から下の人に向かって行なう行為です。ですから場合によっては、確かにほめられているということは頭で理解できても、見下されているような印象を持ってカチンと来ることがあります。たとえば、あなたが家事でも仕事でも一生懸命がんばって何か成し遂げたとき、家族や同僚から「おー、偉い偉い」と言われてうれしいですか?

上から目線を感じさせない肯定的な反応は、感謝です。あるいは感激(喜びの表明)です。たとえば、「助かった。ありがとう!」「○○してくれてうれしい!」というような言葉です。

他の人、特にお子さんが当たり前のようにしている様々な良い行動を「意識して」探しましょう。そして、これまた「意識して」感謝や感激の言葉をかけましょう。言わなくても伝わっているなどということはありません。言わなければ伝わりません。少なくとも私たちはそう思って実践しましょう。

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