2021年3月号
新型コロナの問題で振り回された令和2年度も今月でおしまい。来月はお子さんたちも1学年進級、または進学です。おめでとうございます。来年度は早く子どもたちが自由に学習や活動ができる状況になるといいですね。それでは今年度最後のおたよりをお届けします。
音楽のパート
今、YouTubeで高校生たちのマーチングバンドの動画を視るのにハマっています。私自身、中学・高校で吹奏楽部に所属していたというのも理由の一つです（マーチングでなく座奏でしたが）。
私が担当したのはサキソフォン（アルト、テナー、バリトン）でした。アルトサックスやテナーサックスはソロ演奏も多くて結構目立ちますが、大きなバリトンサックスはチューバやファゴットなどと同様ベースラインをブンブン吹くことがほとんどで、そんなに目立ちません。しかし、そういう低音部の楽器が無いと全体の演奏がまったく締まりません。目立つ楽器も目立たない楽器も、ともに重要なバンドの一部なのです。
性格も楽団のようなもの
私たち人間の性格も、吹奏楽や管弦楽の楽団のようなものです。人の性格は単純ではありません。様々な特性が混然一体となって作り上げられています。
それらの様々な特性の中には、まったく逆の音色を持ったパートもあります。
一人の人の中に、まったく逆の性質が同居しているのです。たとえば、「あの人は怒りっぽい人だ」と多くの人に思われているような人にも、他の人に優しい接し方をしたり、人の失敗に対して寛容に反応したりすることがあるものです。
ただ、「すぐ怒る」という特徴の方が「穏やかに優しく接する」という特徴よりも目立つので、「あの人は怒りっぽい人だ」と評価されてしまうのです。
どちらがメインの性質？
しかし、どんなに怒りっぽい人だって、24時間怒りっぱなしということはありませんね？ 穏やかに過ごしている時間もあります。むしろ、そういう時間の方が怒っている時間よりはるかにはるかに長いはずです。ですから、実は「穏やかで優しい人」というのがその人のメインの性質なのです。
短所をひっくり返してみよう
皆さんのお子さんはどんな性格でしょうか。グズ？ 怠け者？ 気が利かない？ 根気がない？ そんなふうにいわゆる「短所」が気になっておられるなら、その短所をひっくり返してみましょう。グズなら行動が早い、怠け者なら勤勉、気が利かないなら気配り上手、根気がないなら粘り強いというふうに。
そして、実は
そのひっくり返した性質こそ、お子さんのメインの性質だと知ってください。ホントです。ただ目立たないので自分にも無視されて、そのおかげでますます表に出てこられなかっただけです。
私はバリトンサックスを吹いていたので、多くの楽器が鳴っている中でもバリトンサックスの音色をすぐに聞き分けて意識することができます。そして、全体のハーモニーの中でとても重要な音を出していることに気づいて感動します。それと同様に、見つけようとほんのちょっと意識するだけで、きっと皆さんもお子さんの中の「逆の性質」に気づくことができるはずです。そしてそれを呼び続けてあげれば、その逆の性質がだんだん表に現れてきて、名実ともにメインの性格となります。
信じて呼びだそう
もしも「この子怒りっぽくて困るなあ」と思うなら、「いつも優しいね」と言ってあげましょう。「この子何でも適当で困るわ」と思うなら、「あなたのいいところは丁寧にやることよね」と言ってあげましょう。それは嘘をついて、子どもをいい気にさせてがんばらせようという作戦ではありません。お子さんは本当に優しいのです。丁寧にやれるのです。早く行動できるのです。根気があるのです。
もちろん嫌みっぽく言っては効果がありませんが、本当にそう信じて呼び続けていたら、実体が必ず伴ってきます。だって、皆さんのお子さんはとても素直な性格なのですから。