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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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ちょうど良かった!


2021年11月号
昨今、人間の脳についての研究がどんどん進んでいます。私たちの脳は、調べれば調べるほど不思議な性質や能力に満ちているようです。今日は、そんな脳の不思議な性質についてお話しします。子育てや自分育てにぜひ生かしてくださいね。

脳の性質

私たち人間の脳には、「問いかけを受けると、その答えを自動的に探そうとするという性質」があるそうです。しかも、一旦問いかけを受けると、意識では忘れてしまっても無意識で答えを探し続け、何かしらの答えを見つけるか、「分からない」と自らストップさせてしまうまでそれが続きます。

ですから、私たちが子どもたちや他の家族や友人、同僚たち、そして自分自身にどんな質問を投げかけるかというのはとても重要です。たとえば、学校から帰ってきた子どもに「今日はどんな嫌なことがあった?」と尋ねたら、どうなるでしょう。その子は脳をフル回転させて嫌な出来事を思い出そうとします。たとえその時にはそれほど嫌だと感じなかった出来事までも、ものすごく嫌な感情を新たに付加して嫌な記憶にしてしまいます。

それが繰り返されれば、学校そのものが嫌な場所、つらい場所、苦しい場所だと思うようになり、当然喜んで行きたいとは思わなくなります。さらにこれが悪化すれば登校しぶり、不登校です(もちろん、登校しぶりや不登校の原因はこれだけではありませんが)。

ポジティブな質問

一方、「今日はどんな楽しいことがあった?」というふうに、ポジティブな回答を引き出すような質問の仕方をしたらどうなるでしょうか。脳は楽しかった出来事を全力で探し始め、ほんの少し楽しかった程度の出来事でもものすごく楽しかった記憶として思い出します。当然、それが繰り返されれば「学校は楽しい場所」という思いが強くなり、多少嫌な出来事が起こってもそれをものともせずに喜んで登校し続けるでしょうし、学習やその他の活動にも積極的に参加するようになるはずです。

ポジティブな質問をしたとき、仮に「今日はいいことなんか全然なかった」という答えが返ってきてもご心配なく。毎日繰り返し尋ねているうちに、だんだんと脳がポジティブ思考に慣れてきます。

他のポジティブな質問の例としては、たとえば「どうしたらうまくいくと思う?」「どこを工夫したらもっと良くなる?」「特にどんなところをがんばったの?」「あなたの理想としては、どんなふうになったらいいと思うの?」「あの子の好きなところは?」などがあるでしょうか。他にもいろいろ考えられますから、ぜひいろいろ考えてお子さんに投げかけてみてください。

前向きな口癖

さて、脳は「自らに問いかける力」も持っています。たとえば、嫌な状況、ガッカリするようなことが起こったときに、あえて「ちょうど良かった!」とか「絶対に何とかなる!」とかいうふうに、現状や未来をすばらしいと宣言する前向きな言葉をつぶやいてみるとどうなるでしょう。脳は「嫌なはず、ダメなはずなのにすばらしい」というその矛盾を解決しようと、「何がちょうどいいの? どうしてすばらしいの? なぜ何とかなるって言えるの?」と自ら問いを発し、答えを見つけようとします。その結果、その嫌な出来事の中でどのように行動すれば生産的かに気づき、生産的に行動できるようになります。

以前、村外の子育てサークルで出会ったお母さんは、幼稚園生の上のお子さんが、下に赤ちゃんが生まれてからその子に意地悪するようになったことに悩んでおられました。そして「ちょうど良かった!」とつぶやくようにしたところ、そのうち答えが浮かんできました。「上の子にも、もっといっぱいかまってあげなきゃいけないということを教えてもらった」「私一人で子育てしなくていいということ、夫などにももっと下の子のお世話を手伝ってもらっていいんだってことが分かった」。そして、ご主人と話し合い、ご主人が下のお子さんの面倒を見ている間に、上のお子さんとたっぷり遊ぶ時間を持つようにしたところ、間もなく意地悪が収まったそうです。

ただし、お子さんが失敗したり壁にぶつかったりして悩んでいるときに、周りの人が「良かったね」などと言うのはもちろん避けてください。お子さんは「全然僕の気持ちを分かってくれない」とよけいつらい気持ちになってしまいます。自分で自分に向かって宣言するところに意味があります。ですから、まずは保護者の皆さんが前向きな言葉を繰り返し使って、それを口癖にしてみましょう。その上で、お子さんが特に嫌な気持ちでないときに前向きな口癖を勧めてみてください。

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スクールソーシャルワーカー
増田泰司(ますだたいじ)

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