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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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子の気持ちの上手な扱い方 その2


2022年6月号
今年度は、強い心の育て方というテーマでお話ししています。そして、子どもの心を強くするには、「周りの大人たちから気持ちを上手に扱ってもらう」体験を積み重ねることが必要だと申し上げました。前回に引き続き、その方法の一つをお話しします。

前回、相手の話を聴く際には、「私はあなたの話をしっかり聴いているよ」というサインを出しながら聞くことが大切だと申し上げました。そして、(1) 相手を見る、(2) うなずく、(3) 相づち(声)を入れるという3つのサインを取り上げました。今回は、4つ目のサインを紹介しましょう。

反射

カウンセリングの技法の中に、「反射」とか「エコー」とか呼ばれるものがあります。これは、相手が話した言葉をそのままオウム返しにするものです。典型的には、企業の電話応対で行なったり、警察や消防や自衛隊の方々が上官や司令部から受けた命令に対して行なったりする「復唱」です。
顧客「海山商事のフグ田と申します。波野さんをお願いいたします。」
職員『海山商事のフグ田さまですね。お世話になっております。ただ今波野におつなぎいたします。』
このようにこちらが語った言葉を適宜復唱してもらえると、「この人は、しっかりこちらの話を聞いてくれている」と安心し、聞き手に信頼を寄せることができます。というのも、相手の話をしっかり聴いていなければ、復唱することができないからです。

日常会話で使える反射

ただ、日常会話で相手が語った言葉をいちいち復唱していると、語り手は話の流れを邪魔されてうっとうしく感じがちです。場合によっては、「馬鹿にされた」と怒りを覚える人もいるでしょう。ですから、日常生活で使う場合には、もう少し頻度を落としましょう。

具体的には、次のようなやり方をします。相手が話をしていて、ちょっと言葉が途切れたり、息継ぎしたりしているタイミングがありますね。その時、あなたの頭の中に残っている、相手がしゃべった単語、1個か2個を、そのままオウム返しにします。

その際、ちゃんとした日本語にする必要はありません。「○○が…」とか「△△の□□を…」とかで構いません。それでも、相手は「ちゃんと聞いてもらっている」と感じて安心し、「この人にならもっと話したい」と思ってくれます。
ねえ、ちょっと聞いてよ。今度こそレギュラーになると思って、必死で練習してきたんだよ? ホント、1回も練習休まなかったのに…。そしたら今日、次の試合のスタメンが発表になって、新しくスタメンに入ったのは、私じゃなくてA子だったんだよ。マジ、信じらんない!
へー、あなたじゃなくて…。
このような話の聴き方は、「バックトラッキング」などとも呼ばれます。

バックトラッキングのコツは、「時々」使うこと。あまり頻繁に使っていると、相手はうっとうしく感じてしまうので注意してください。基本的には前回紹介したように、「ふーん」「へー」「うん」「なるほど」「それで?」「それから?」というような相づちを挟みながら傾聴します。そして、時々相づちの代わりにバックトラッキングを使うのです。

否定されない体験

バックトラッキングを使うと、相手は「ちゃんと聴いてもらっている」と安心するだけではありません。バックトラッキングは、相手がしゃべった言葉を繰り返すだけです。話の内容を否定したり、相手の態度を批判したり、頼みもしないのによけいなアドバイスをしたりしません。

ですから、語り手は聞き手に対して「この人は、私を馬鹿にしない人だ。否定しない人だ。私のありのままを受け入れてくれる人だ」と感じ、さらに深い信頼を寄せるようになります。そうすると、「この人のアドバイスや説教なら真剣に耳を傾けよう」と思ってくれるようになるでしょう。

お子さんに対して、バックトラッキングを意識して使ってみてください。その効果を必ず実感なさるでしょう。

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福島県大玉村
スクールソーシャルワーカー
増田泰司(ますだたいじ)

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