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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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子の気持ちの上手な扱い方 その3


2022年7月号

4月以降、「強い心の育て方」というテーマでお話ししています。子どもの心を強くするには、「子どもの気持ちを上手に扱う」ことが大切です。今回も具体的にどう関わったらいいかお話しします。

欲求の優先順位

他の人が私たちに愚痴をこぼしたり弱音を吐いたり相談を持ちかけたりしたとき、その人は別に私達に問題を解決して欲しいとは思っていません。…というのは言い過ぎですね。しかし、ある意味本当です。

人間の欲求は、優先順位によってレベル分けされています。優先順位の高い欲求を放ったらかしにして、優先順位の低い欲求に応えようとしても、人は受け付けません。たとえば皆さんが山登りをしていて、疲れたから腰を下ろして休みたいと思ったとします。その時遠くに熊の姿を見つけたらどうしますか? 休みたいという欲求に忠実になって休みますか? たぶん脱兎のごとく逃げ出すでしょう。それは休息欲求より安全欲求の方が、はるかに優先度が高いからです。

愚痴をこぼしたり相談を持ちかけたりする人が、「この問題を何とかしたい」「問題解決のためのいい方法を教えて欲しい」と思っていることは間違いありません。しかし、より優先順位の高い欲求があります。それは「私のこのつらい気持ちを分かって欲しい。そして、どうしてそんな気持ちになっているか分かって欲しい」です。これを放ったらかしにしたままアドバイスしたり指導したりしても相手は受け入れてくれませんし、たとえ「分かりました」と言っても行動が変わらないでしょう。

共感

これまで紹介した「傾聴」や「フィードバック」を用いながらじっくり相手の話に耳を傾けると、相手の気持ちやそう感じる理由が分かってきます。その時に用いるのが共感の技法です。共感とは、相手が自分の感情を表現したとき、聞き手も同じ思いを感じ取り、相手がそのような思いを持つことに対して、
  1. 「あなたの気持ち、分かりますよ。」
  2. 「そう感じる理由も、分かりますよ。」
  3. 「あなたがそう感じるのは当然ですよ。」
というふうに、十分な理解を示すことです。

要するに「分かるよ」というメッセージを伝えることですが、相手の苦しみが深い場合には「分かるよ」というセリフは反発を招くことがあります。「たかだか15分くらい話を聞いただけで、私のこの苦しみが分かってたまるか! そんなに軽い苦しみじゃないぞ!」という反発です。

ですから、「分かるよ」以外の表現方法を知っておくといいですね。ここでは、いろいろなシチュエーションで使える汎用性の高い表現を6つ紹介します。
(1) 『そうですよねぇ』
(2) 『それは〜ですよねぇ』……(〜には相手の気持ちが入ります)
(3) 『それは〜でしょう?』……(〜には相手の気持ちが入ります)
(4) 『それはそうですよ』
(5) 『ホントですよね』
(6) 『そう感じるのは当然ですよ』

まずはこのまま憶え、心をこめて使ってみてください。もちろん、TPOに応じて「そうですよねえ」を「そうだよねえ」、「ホントですよね」を「ホントにね」というふうにフランクな表現に変えたり、方言に変えたりするのはOKです。
  • そういえば、福島弁の「ンだからぁ」も汎用性が高い共感の言葉ですね。

共感してからアドバイスや指導

入院している患者さんから「隣のベッドの人のいびきがひどくて、昨日は一晩中眠れなかったよ」と言われた看護師さん。「じゃあ、お医者さんに言って睡眠薬を出してもらいますね」と返事すると病室から出て行ってしまいました。この看護師さん、「腕はいいんだけど、ちょっとなぁ」と患者さんからの人気が無い方だったそうです。何が問題なのでしょうか。

この看護師さんは、体には対応してくれても、心に対応してくれていません。ですから、多くの患者さんがガッカリするのです。上述のケースで、「えー! それはおつらかったでしょう? じゃあ、睡眠薬を…」というふうに、まずつらい気持ちに共感しておいてから睡眠薬の話を出していたらどうでしょう。きっと患者さんは満足したのではないでしょうか。この点を医師から指導されたあの看護師さん、「まず共感」を心がけたところ人気ナースに変わったそうです。元々腕はいいですからね。

愚痴や弱音を聞いたり相談を持ちかけられたりしたとき、アドバイスしたり指導したりしてはいけないのではありません。最初によく話を聴いて十分共感し、それからにアドバイスや指導をするという順番が大切なのです。

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増田泰司(ますだたいじ)

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