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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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勇気づけ その3


2022年12月号
今年度は、子どもたちの「強い心を育てる」というテーマでお届けしています。今日は子どもたちに「小さな成功体験」をたくさんさせる、という話です。

自分で自分のやる気を引き出す力

これまでの話を振り返ってみましょう。強い心を持った人とは、「自分の感情を自分自身で上手に扱える人」のことだと申し上げました。その結果、壁にぶつかってへこたれそうになったり、続けるのに飽きたり、他のおもしろいことに興味を奪われそうになったりしても、やるべき事をコツコツと実践することができます。

そのような態度を身につけるには、「自分で自分のやる気を引き出す」ことができるようにならなければなりません。ごほうびで釣られたり罰や叱責で駆り立てられたりするなど、外部からやる気を引き出されても、ごほうびをくれる人や叱る人がいなくなれば、途端にやる気が下がってしまうでしょう。

子どもが自分で自分のやる気を引き出す力を手に入れるには、成長の過程で「小さな成功体験」をたくさん積み重ねる必要があります。

小さな成功体験

ご自分や親戚のお子さんが、初めて立ち上がった日のことを憶えていらっしゃるでしょうか。立ち上がったといっても、きっとすぐに倒れたり尻餅をついてしまったりしたことでしょう。しかし、親やおじいちゃん、おばあちゃんは大喜びし、子どもに満面の笑顔を向けて大絶賛したはずです。そして、一歩踏み出したあの日。みんな狂喜乱舞して子どもをほめたたえたことでしょう。

お釈迦さんは生まれたその日にすっくと立ち上がって7歩歩いたそうですが、普通の子どもはそんなことはできません。立とうと思ってもすぐ尻餅をつき、歩こうと思ってもすぐに倒れてしまいます。それでも、周りの大人たちはその子の「小さな成功」をほめ、一緒に喜びます。すると子どもはいい気持ちになります。その快感が「もっとがんばろう」というやる気につながるのです。

「小さな成功体験」を繰り返し味わった子どもは、「世の中すぐに思い通りになるわけではないが、あきらめずにがんばれば結構何とかなるし、自分には何とかできるだけの力がある」と信じられるようになります。そして、「がんばって何かを達成するのは気持ちがいいことだ」ということを体験的に学習します。

そういう信念を持った子どもは、いろいろなことに果敢にチャレンジするようになるし、多少の問題がやってきてもあきらめずにやり通すことができるようになるでしょう。つまり、自分で自分のやる気を引き出せる子に育つのです。

小さな成功体験を味わわせる

自分で自分のやる気を引き出せる子に育てるため、家庭や学校で子どもたちにたくさんの小さな成功体験を味わってもらいましょう。

たとえばテストで80点以上取ったとか、競争で1番になったとか、宿題を全部終わらせたとかいう、周りの大人が期待したとおりの結果を出したときだけほめるのは、「小さな」成功体験になりません。期待通りにはまだまだ足りないけれど、ほんの少しでも望ましい行動を取ったときに、すかさずほめたり喜んだりする。これが「小さな」成功体験を味わわせることになります。

食事の時にじっと座っていられず、すぐに立ち歩く子がいました。お母さんは困っていましたが、ベテラン保育士である親戚がアドバイスをくれ、それを実践することにしました。そのアドバイスとは、些細だけれど望ましい行動をしたときにすぐにほめたり喜んだりすることです。

具体的には、子どもが食卓を離れても危険なことをしない限りはいちいち注意せず、代わりに座った瞬間に、にっこり微笑みながら「ちゃんと座れたね」と伝える。食べ物を口に運んだら、やはりすかさず「おいしそうに食べてくれて、ママうれしいなぁ」とにっこり。これを繰り返します。

すると、だんだんと食事中の立ち歩きが減り、食事に集中できる時間が長くなっていったそうです。

子どものやる気を育てるコツは、望ましいことをすればほめられたり喜ばれたりしていい気持ちだということを繰り返し体験させること。大きな成功だけでなく、小さな成功にこそ注目しましょう。

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