2023年1月号
今回のテーマは、強い心を育てるためにほめ方・叱り方を工夫してみよう、です。
健全な批判と誹謗中傷の違い
最近、SNS等で誹謗中傷を受けたとして、芸能人などがユーザーを訴える事案が増えてきています。中傷に心を痛めて自らの命を絶ってしまう人もいますから、この流れは致し方のないことかもしれません。一方で、不適切な行動をたしなめただけで、誹謗中傷されたと逆ギレする人もいます。
学問・科学や政治の世界では、健全な批判無くして発展がありません。では、健全な批判と誹謗中傷とは一体どこが違うのでしょうか。
行動を問題にするか人格を問題にするか
批判は相手の行動を問題にし、誹謗中傷は相手の人格を問題にします。
- 「その行動はこういう理由で正しくない。こんなふうに改めるべきだ」というのが批判。
- 「そんなことをするあなたは、邪悪な人だ。ダメ人間だ。生きる価値が無い」というふうに、相手の性格・性質や人間としての価値を下方評価するのが誹謗中傷。
これは「指導」と「パワハラ」の違いの1つでもあります。パワハラには人格否定が伴います。
叱るときには行動を指摘する
最近は「叱らない子育て」が注目されていますが、これは放任とは異なります。子どもが不適切な行動をしたときでも、何も指摘したり健全な行動を教えたりしないわけではないということです。
よく「叱(しか)ると怒(いか)るは違う」と言われます。叱るのは教育であり、怒るのは自分のいらだちを相手にぶつけること、すなわち鬱憤晴らしです。「叱らない子育て」というのは、感情的に鬱憤晴らしすることを戒める言葉であって、子どもの不適切な言動を矯正するような関わりを一切しないことではありません。私個人としては「叱らない子育て」ではなく「怒らない子育て」と言い換えた方が、分かりやすくて誤解を生みにくいと思っています。叱らない子育てなどあり得ません。
「怒る」は誹謗中傷に当たります。子どもをしつけているつもりで、「ホントにグズなんだから!」「こんなことをして、悪い子!」「そんなんじゃ、社会で通用しないぞ」といった人格否定が加わっていないでしょうか。
叱るときには、人格否定は避けましょう。そして、行動を問題にします。具体的には、以下の3つのことを指摘します。
- 自分が相手のどんな行動を問題にしているか。
- どうしてその行動が問題なのか。
- 代わりにどのような行動をして欲しいか。
なお、これらの指摘はできるだけ簡潔に。叱る時間が長くなると、相手の集中力が途切れて逆効果です。そして、これら3つの情報が入っていることが大切なのであって、大声を出すかどうか、にらみつけるかどうかなどは些末なことです。むしろ、大声や怖い表情によって「自分は嫌われている」と感じさせたとしたら、それは人格否定につながって逆効果です。
叱った後は、自分が相手を大切に思っているということを伝えることも忘れないようにしましょう。「しっかり聞いてくれて嬉しい」「期待しているよ」「でも○○ちゃんのことは大好きだよ」などと言ったり、「叱るのはこれでおしまい」と言ってぎゅっと抱きしめたりするなどです。
ほめるときは人格をほめる
一方、
相手をほめるときには結果だけでなく、その結果を生み出した相手の人格もほめましょう。その結果を生み出したのは、相手にこんな素晴らしい性質があるからだということを指摘するのです。たとえば、「前よりも漢字テストの成績が上がったね。コツコツがんばって勉強したものね。
○○ちゃんはがんばり屋さんだなぁ」「お手伝いしてくれてありがとう。助かったよ。
○○くん、やっさしぃ!」など。
叱るときには行動だけ問題にし、ほめるときには人格(性格・性質・人としての価値)を高評価する。心がけてみてください。きっと、子どもたちのやる気・元気・根気が爆上がりです。