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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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「ほめ」と「おだて」の違い


2020年6月号
3〜5月合併号では、「お子さんの多少の不適切な行動はあえて無視して、むしろ望ましい行動を意識して探しましょう」ということを申し上げました。すると「自分はおだてるのもおだてられるのも好きではない」というご意見をちょうだいしました。はい、私も同じく嫌いです。実は、ほめることとおだてることは全く違う行為です。

おだてるとは

「おだてる」という言葉を漢字で書くと「煽てる」です。この字は火を扇などで仰いで勢いを増す様子を表しています。そして、人を挑発してケンカを起こしたり勢いづかせたりする「あおる」も同じ漢字が用いられます。また、巧みな演説や論説などを駆使することによって群集心理を操作して、こちらが望むようなデモや暴動を引き起こすという意味の「扇動」は「煽動」とも表記されます。

ですから「おだてる」とは、「相手が気分良くなるようなことを言って調子づかせ、こちらが望む行動を引き起こすこと」です。目的はこちらが望む行動を引き出すこと。相手を調子づかせるためなら、時には嘘だって言います。ホントは素敵だなんて思ってないのに「素敵!」というふうに。

ところが、その目的や嘘は結構相手に見破られてしまいます。本心から言ってないな、裏があるなと分かるので、多くの人はおだてられるのが嫌だし、自分はそんな不誠実な真似はしたくないと思うのです。今回ご意見をいただいた方もそうでしょう。

ほめるとは感動すること

一方、ほめるというのは一種の感動です。「この子、こんなことができたんだ。すごいなぁ。」とか、「この人ってホントに優しいなぁ。うれしいなあ。」とかいう感動をそのまま素直に相手に伝えることです。相手を思い通りに動かすための方便ではなく、真実な思いがベースにあります。

ですから、ただ単に「すごいすごい」「えらいえらい」というような抽象的なほめ言葉ではなく、何がどう感動的なのか、何がどううれしいのかを具体的に指摘することができるはずです。おだてには証拠はいりませんが、ほめには証拠が必要です。嘘やその場限りの方便ではなく、心からの言葉でなければならないからです。

行動をほめよう

そして、その素晴らしい証拠は、結果ではなくその結果を生み出した相手の行動の方がいいです。100点を取ったからすごいねではなく、100点を取るためにその子がどんな努力や工夫をしてきたかを観察し、それを指摘するようにしましょう。結果だけほめていると、悪い結果が出たときに隠すようになったり、失敗を恐れて難しいことにチャレンジしなくなったりする恐れがあります。

ですから、結果よりも行動をほめましょう。ほめるとは、相手の行動に対する正当な評価です。相手の行動を評価するためには、折に触れて相手の努力や工夫を観察していなければできません。ですから、行動をほめるようなほめ方ならば、子どもは「ちゃんと見ててくれている」とうれしくなりますし、もっとがんばろうというやる気にもつながります。

そして、結果ではなくそれを生み出した行動に注目すれば、たとえ結果が思わしくなくてもほめることができます。

調子に乗って努力しなくなる?

企業などで講演させていただくこともありますが、たまに「ほめると調子に乗って安心し、努力しなくなるから部下をほめない」という方がいらっしゃいます。しかし、自分が上司に「最近書類のミスがほとんど無くなったなあ。ていねいに見直すようになったからだね。いいね〜。」とほめられたり、家族に「毎日違う献立を考えるのって大変だよね。いつも工夫してくれてありがとう。」と感謝されたりしたとき、「よし、じゃあこれからはもう少し手を抜いても大丈夫だ。」とは思いませんね? むしろ、もっとていねいに見直してミスを完全になくそうとか、もっとおいしい料理を作って家族に喜んでもらおうとか思うのではないでしょうか。

相手が調子に乗って努力しなくなるとしたら、ほめ方がどこかおかしいのです。結果にしか注目せずその間の努力や工夫は無視していたり、そもそも「相手を調子づかせて、こちらの思うように動かそう」という目的で適当なことを言ったりしているのでしょう。

ほめ上手になるために、これからもお互いに精進してまいりましょう。

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