2022年1月号
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
前回、ブリーフセラピーで用いられている、「Do more」と「Do different」の技法を紹介しました。「うまくいっていることは、意識してさらにやってみる」「うまくいっていないことは、別のやり方でやってみる」でしたね。これからもできる場面で使ってみてください。さて今回は、同じくブリーフセラピーの「スケーリングクエスチョン」の技法を紹介します。
スケーリングクエスチョンとは
スケーリングを訳すと「尺度化」です。尺度化というのは、感覚的・抽象的なものを数値で表わすことで、自分も他人も客観視できるようにすることです。たとえば通知表の5段階評価や10段階評価も、学習の習得具合を尺度化したものです。
また「腹八分目」という言葉がありますが、これは満腹の度合いを尺度化した表現ですね。「食べ過ぎないようにね」と言われるより、「腹八分目にしようね」と言われた方が、どれくらい食べればいいか想像しやすいです。
そして、
悩み・目標達成度・関係の深さなどを尺度化・数値化すると、「当面何をすればいいか」を見つけやすくなります。スケーリングクエスチョンとは、相手が自分の置かれている状況を尺度化できるような質問を投げかける技法です。
スケーリングクエスチョンの例
- 「お子さんとの関係がこれ以上ないほど最悪な状態を0点、反対に最高なのが10点とすると、今のあなたとお子さんの関係は何点ですか?」
- 「最高に自信に満ちあふれて学習している状態を10点、自信が全くなく学習に手が着けられない状態を0点とすると、今は何点ですか?」
これらの質問にたとえば「3点です」という答えが返ってきたとしましょう。今度はこれを使って「うまくやれている部分に意識を向けさせる質問」や「別のやり方を考えさせる質問」につなげます。例を挙げましょう。
@うまくやれている部分に意識を向けさせる質問
「3点ということは、30%はうまくいっているということですね。それはたとえばどういう部分ですか?」
そのようにして
すでにできている部分を明確にし、「うまくやれていますね」「すばらしいですね」などと十分に認め、「さらに続けていきましょう」と励まします。先月紹介した「Do more」の技法です。
A別のやり方を考えさせる質問
「3点を、1点プラスして4点にするためには、何をすればいいと思いますか?」
これは先月紹介した「Do different」そのものではありませんが、
これから新しくできることを考えてもらうという点では同じですね。
お子さんや部下を叱ったり注意したりする際、悪いこと・間違ったこと・望ましくないことをしたという過去を責めることに時間とエネルギーを費やすより、今何をして欲しいのか、これからどうしたらいいかという、現在・未来に注目した指導ができるといいですね。
たとえば、宿題になかなか手を付けずに寝る時間になってしまう子に対して、「夕食までに宿題を終わらせるにはどうしたらいい?」とか「宿題をお風呂までに終わらせるために、帰ってまず何をしたらいい? それが済んだら何をすればいい?」というふうに尋ねてみるなど。
リソースに注目
スケーリングクエスチョンを使う際には、リソース探しを心がけましょう。リソースとは相手が今持っているよい性質や行動、今持っている人脈、今持っている財産など、すでに持っている望ましい要素のことです。
うまくいっていない部分に注目させるのではなく、うまくいっている部分に注目させましょう。今できていないことに注目させるのではなく、これからできることに注目させましょう。