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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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未来像を尋ねる質問


2022年2月号
前回はブリーフセラピーでよく用いられる「スケーリングクエスチョン」を紹介しました。今回も、効果的な質問の仕方を紹介します。それは「相手の未来の姿を引き出す質問」です。

未来の姿は?

これから紹介するのは、相手の将来の姿を引き出す質問、別の言い方をすると「相手が将来の姿を思い描けるように導く」ような質問です。

人が成長したり問題を解決したりするためには、「これから自分はこうなりたい」「このような状態になる」というふうに、あるべき未来の姿を思い描き、それを目標にすることが必要です。しかし、壁にぶつかったり悩んだりしている人は、現状のつらさや困難さにばかり目が向きがちです。するとそれが心理的なブレーキとなって、将来のあるべき姿を思い描くことが難しくなってしまいます。

そこで質問を使って、相手が理想的な未来を思い描けるようサポートするのです。「未来」の姿を明確に思い描けるようになった相手は、それに近づくために「今」何をすべきかを考えられるようになります。そして、そのなすべき行動を始め、結果として問題が解決したり成長したりします。

ミラクルクエスチョン

まず紹介するのは「ミラクルクエスチョン」と呼ばれる技法で、問題がすべて解決したら、どんなふうになるかを尋ねます。たとえば、
  • 「ここに魔法の杖があって、それを振ると明日すべての問題が解決するとします。そうしたら明日はどんな一日になりますか?」
  • 「今、問題が全部解決したとしたら、5年後のあなたはどんなふうになっていると思う?」

タイムマシーンクエスチョン

次に紹介するのは「タイムマシーンクエスチョン」です。タイムマシーンに乗って未来の自分に会いに行ったら、未来の自分はどんな状態かを尋ねます。その際は問題が解決せずひどい状態になっている未来ではなく、問題が解決した未来を想像させましょう。たとえば、
  • 「タイムマシーンに乗って5年後の未来に行くとします。5年後のあなたは今の問題が全部解決しています。そんなあなたはどんな生活をしていると思いますか?」

未来像を引き出す質問の例

中学生のAくんは英語の勉強が苦手でした。苦手意識から積極的に勉強しようという意欲を失ってしまい、ますます成績が下がってやる気を失うという悪循環に陥っていました。

そんなある日、野球部に所属するAくんは、お父さんと一緒にテレビでメジャーリーグの試合を観戦しました。お父さんは尋ねました。「Aは将来プロの野球選手になりたいのか?」 Aくんは恥ずかしそうに、しかしきっぱりと答えます。「うん。将来はメジャーリーグに行ってオオターニサンのように活躍したい。」

するとお父さんは尋ねました。「へー、そうか。いいね。じゃあメジャーに行ったとして、どこの球団を選ぶんだ?」 さらに次々と質問しました。「どこのポジションを守ってる?」「契約や年俸はどれくらい?」「初シーズンの打率はどれくらい?」「ホームランの数は?」「どんな車に乗ってる?」「どんな家に住んでる?」「休みの日はどんなふうに過ごしてる?」「ベンチではどんなことをチームメイトとしゃべってる?」「初ホームランを打った日、インタビューでどんなことを話す?」「お父さんたちへの仕送りはどれくらい?」 Aくんも生き生きとそれに答えました。

こうして二人で楽しく過ごした後、Aくんは思いました。「英語がしゃべれた方が、監督やチームメイトとの意志疎通がスムーズだよなあ。それに通訳無しに、英語でインタビューに答えられたら、かっこいいよなあ」。それから熱心に英語の勉強をするようになったとか。

まずはあなたから

お子さんに試す前に、皆さんがご自分について試してみてください。「魔法で問題が今すぐ全部解決したとしたら、そしてその後タイムマシーンで未来の自分に会いに行ったなら、5年後の自分はどんなふうになっているだろう?」

コツは真剣にやらないこと。深刻に考えず、ゲーム感覚で楽しみながらやります。そうして、理想的な未来像を思い描いてニヤニヤしましょう。ほら、ちょっぴり希望ややる気がわいてきませんか?

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スクールソーシャルワーカー
増田泰司(ますだたいじ)

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