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ショートエッセイ:中通りコミュニティ・チャーチ

何をしないであげるか

(2007年12月16日)

「愛の実践」というと、「何をしてあげるか」ということに意識が向きがちです。しかし、同時に「何をしないであげるか」ということも考える必要があります。こちらが親切で手を出すことで、相手の自立を邪魔してしまうことがあるのです。

Aさんは、息子さんが20歳を過ぎても、勉強するわけでも働くわけでもない(ニートと言います)ことに困り果て、私にカウンセリングを依頼されました(本人の許可を得てお話しします)。

「どうして息子さんに働いて欲しいのですか?」と尋ねると、「自分たち夫婦は自営業で、退職金がもらえない。今はまだ息子と三人で生活できるけれど、このまま息子が働かないと、老後が心配だ」という話です。当然ですね。

さらにお話を伺っている中で、私はお母さんが息子さんに小遣いを渡していることに注目しました。息子さんはよさこい祭りが好きで、全国で行なわれるよさこい祭りに、よく泊まりがけで出かけるそうです。そして、お母さんは息子さんに求められるまま、その旅費などを渡していました。

「お母さん。今後一切小遣いを与えてはいけません」と私は申し上げました。するとお母さん、「でも、そんなことをすれば、息子は退屈で、毎日つらいんじゃないでしょうか」。「ええ、つらいでしょうね。でも、そうでないと、働かなければならないとは思いませんよ。だって、今のままだと、彼は別に働く必要を感じなくて済んでいるでしょう? 人は、困らないと変わろうとしないものです」。

それでも、お母さんはしばらく小遣いのことは言い出せませんでした。言い出そうとすると、ぶるぶる震えてしまうのです。それによって、お母さんは、自立していないのは息子ではなく、自分自身だったということに気づかれました。そして、自分自身のために本気になりました。神さまに祈りながら、仲間たちに励まされながら、ついに小遣いを渡せないこと、働いて欲しいということを息子さんに伝えました。「お前のため」ではなく「お母さんのために」という言葉を添えて。

すると、息子さんは「分かった」と言い、程なく就職を決めてきました。そして、今も楽しそうに仕事に行っているそうです。試しに「食費を毎月2万円入れてくれないか」と頼むと、それもきちんと支払ってくれるようになりました。

「何をしてあげるか」だけでなく、「何をしないであげるか」にも注意を向けましょう。

と同時に、神さまの愛についても考えてみましょう。あなたのことを命がけで愛してくださっているイエスさまは、あなたのために何をしてくださっているでしょう。そして、何を「しないで」いてくださっているでしょうか。

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