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ショートエッセイ:中通りコミュニティ・チャーチ

どぶに飛び込んだ女子大生

(2012年9月9日)

故・梶日出男先生が、知り合いの牧師(A牧師ということにしておきましょうか)から聞いた話として、こんな話を書いておられます。

A牧師が名古屋の教会に赴任してまもなく、子どもたちのための特別集会が催されました。ところが、その集会に来ていた子どもの一人が、教会の前のどぶ川に落ちてしまいます。知らせを聞いたA牧師が飛んでいくと、汚いヘドロの中に男の子が立っていました。A牧師はすぐに助け上げようとしましたが、ちょうどおろしたてのズボンをはいていたので、急いで竿を探しに行きました。

A牧師が竿を見つけて戻ってくると、その子はすでに助け出されていました。そして、代わりに女子大生がどぶ川のヘドロの中に立っていました。その人は、教会学校の教師で、その日は特別な集会ということで、真新しい真っ白なワンピースを着ていました。せっかくの白いワンピースは、跳ね上がった泥でシミになっています。しかし、彼女の姿は、何と美しく輝いて見えたことでしょう。

それに比べて、とA牧師は自分のことを考えました。自分はおろしたての少しも汚れていないズボンをはいて立っているけれども、何と醜く悲しい姿であろうか、と。

梶先生はこの話を聞いた時、二人に感動したと言います。一人はもちろんきれいな服が汚れることなど気にもしないで、すぐにどぶ川に飛び込んで子どもを助けた女子大生。もう一人は、「自分には愛がない」と、自分を真摯に見つめてこの話を語ってくれたA牧師。

そして、私は、この二人はもちろんですが、梶先生にも感動しました。梶先生が「A牧師のようにではなく、この女学生のようになりましょう」などというような批判的なやり方ではなく、むしろA牧師の誠実さに感動し、優しいまなざしでこのA牧師の失敗談を紹介してくださっているのは、先生自身がご自分のことをキリストの前で厳しく見つめて修練なさっておられたからでしょう。

私もあの女学生のように、愛にあふれた生き方がしたい。そして、それとともに、A牧師や梶先生のように、そんなふうに生きられない自分の弱さから逃げない生き方もしたい。そう思わされました。

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