ショートエッセイ：中通りコミュニティ・チャーチ

（2023年9月10日）

脳型コンピュータの開発を行なった脳科学者、松本元先生は、その研究過程でヤリイカの人工飼育法も開発なさいました。すでに20年前に亡くなっていますが、私は生前行なわれた講演をうかがい、その中で先生が語ってくださったエピソードが今も心に残っています。

ある時、知り合いの女性が松本先生に電話をかけてきました。高校生の息子さんが交通事故に遭って、頭を強く打ち意識不明だというのです。医師の診断によれば、息子さんは脳挫傷を起こしており、脳表面の細胞の半分が死滅してしまったとか。これではたとえ命を取り留めても、植物状態になってしまうだろうというのが医師の見立てでした。

しかし、松本先生は知人女性に言いました。「一日中息子さんの手足をさすってあげなさい。そして、たとえ反応がなくても、お子さんの名前を優しく呼び続けてあげましょう」。

この女性と家族は、松本先生のアドバイスを忠実に実行しました。すると、やがて息子さんは意識を取り戻し、数ヶ月後には自分の足で歩いて退院しました。脳表面の細胞の半分は機能しなくなったのに、残された脳細胞が新たなネットワークを作り上げ、健康な人たちと同じように生活できるようになったのです。

松本先生はおっしゃいました。「死にかけたヤリイカの脳細胞も、愛情深く接すれば生き生きと復活する。愛は、脳を活性化させる」。

イエス・キリストを通して私たちに注がれる神さまの愛は、私たちを新しく生まれさせ、私たちの脳を、体を、そして魂を活性化させます。