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礼拝メッセージ:中通りコミュニティ・チャーチ

ボアズ

助演男優シリーズ7

ルツ記2章5節〜12節

(2022年4月10日)

ボアズは旧約聖書のルツ記に登場する農場主で、未亡人ルツと結婚しました。そして、ダビデ王やイエス・キリストの先祖になります。

礼拝メッセージ音声

参考資料

8節で、ボアズはルツのことを「娘さん」と呼んでいます。おそらくボアズはルツよりも結構年上だったのでしょう。

以下は、ボアズの家系図です。

イントロダクション

今日はルツ記から語ります。ルツ記を礼拝メッセージで取り扱うときには、通常主人公であるルツの話が中心です。この教会でも、聖書の中の女性シリーズの一巻で、ルツについて学びました。しかし、これは助演男優賞シリーズなので、ルツと結婚したボアズに焦点を合わせます。

ボアズはあのダビデ王の曾祖父です。ですから、人として来られたイエスさまの遠い先祖に当たります。今回、私たちはボアズの中に、救い主イエスさまの姿を見つけたいと思います。ルツがボアズのおかげで精神的にも物理的にも大いに支えられたように、私たちもまたイエスさまによって支えられています。それを再確認することで、改めて感謝に満ちあふれ、この地上を生きていく上で希望と勇気をいただきましょう。

1.ボアズとルツの結婚

物語の背景

ボアズ
まずは、ボアズのプロフィールを確認しておきましょう。ボアズは、ベツレヘムの町の地主で、広い畑を持っていました。

彼の家系については、ルツ記の巻末に載っています。「これはペレツの系図である。ペレツはヘツロンを生み、ヘツロンはラムを生み、ラムはアミナダブを生み、アミナダブはナフションを生み、ナフションはサルマを生み、サルマはボアズを生み、ボアズはオベデを生み、オベデはエッサイを生み、エッサイはダビデを生んだ。」(4:18-22)。

最初に登場するペレツの父はユダで、この人はアブラハムの子イサクの子ヤコブの4男です。そして、ボアズの曾孫がダビデ王で、さらにその家系から救い主イエスさまが誕生なさいます。
ルツ
次に、ボアズの妻となるルツについても確認しておきましょう。

ルツはユダヤ人ではなく、死海の東の地域に住んでいたモアブ人でした。外国人であるルツがイスラエルのベツレヘムにやってきたのには事情があります。

かつて、イスラエルに飢饉が起こりました。そこで、エリメレクというユダヤ人が、妻のナオミと2人の息子を連れて、飢饉を免れたモアブに移り住んだのです。そして、ルツは息子の一人マフロンの妻となりました。しかし、エリメレクも2人の息子たちも次々に死んでしまいました。こうして、ルツは姑のナオミと共に未亡人になってしまいました。

そんなとき、イスラエルの飢饉が去ったという噂を聞いたナオミは、ベツレヘムに帰ることにしました。ナオミは、ルツにはモアブに留まって再婚するようにと言いました。しかし、ルツはナオミからもナオミが信じる聖書の神さまからも離れたくないと言い張って、ベツレヘムまで着いてきました。

ルツとの出会い

落ち穂拾い
ベツレヘムにやってきたルツは、自分とナオミの生活の糧を得るために、落ち穂拾いに出かけていきました。時は3月から4月頃、ちょうど大麦の収穫が始まった時期でした。

イスラエルのモーセの律法には、収穫の際に麦の穂が地面に落ちても、それを拾い直してはならず、そのままにしておかないといけないと定められています。それは、貧しい人たちがそれを拾って食料にするためです。何だか厳しいイメージのモーセの律法ですが、実際にはとても人間に優しい定めがたくさんあります。

ルツが落ち穂拾いに行ったのは、死んだ夫の親戚であるボアズの畑でした。ルツは分かっていてそこに行ったのではなく、たまたまです。聖書には「はからずもエリメレクの一族に属するボアズの畑であった」(2:3)と書いています。

そして、ルツが一生懸命落ち穂を拾っていると、畑の持ち主であるボアズがやってきました。聖書は「ちょうどその時」(2:4)と書いています。彼もまた、ルツがいると分かって畑にやってきたのではなく、ルツがいるときにたまたまやってきたということです。

ルツ記では、創世記や出エジプト記などで見られたような、華々しい神さまの軌跡は描かれません。しかし、登場人物たちの行動の背後で、神さまが一切のことを支配し、導いておられるのが分かります。ボアズは、神さまに導きによって、未来の妻であるルツと出会ったのです。
ルツへの配慮
外国人でありながら、ユダヤ人であるナオミを慕い、またイスラエルの神さまを信じて従うようになり、ナオミと共にベツレヘムにやってきたルツの噂は、ナオミの親戚であるボアズの耳に届いていました。それは、非常に好意的な噂でした。

一生懸命落ち穂拾いをしている見かけない女性が、そのルツだということを聞かされたボアズは、ルツに対して非常に良くしてやりました。それが今回ご一緒に交読した箇所に書かれています。

まず8節。「娘さん、よく聞きなさい。ほかの畑に落ち穂を拾いに行ってはいけません。ここから移ってもいけません。私のところの若い女たちのそばを離れず、ここにいなさい」。ボアズはルツに落ち穂を拾う許可を与えました。

落ち穂拾いはモーセの律法で貧しい人に認められている権利ですが、このルツ記の時代、すなわちヨシュア記とサムエル記の間の士師記の時代は、モーセの律法を忠実に守る人があまり多くありませんでした。ボアズはとても信仰深く、神さまに忠実な人だったのです。

それから9節。「刈り取っている畑を見つけたら、彼女たちの後について行きなさい。私は若い者たちに、あなたの邪魔をしてはならない、と命じておきました。喉が渇いたら、水がめのところに行って、若い者たちが汲んだ水を飲みなさい」。ボアズはしもべたちにルツの邪魔をしないように命じ、喉が渇いたときにはしもべたちのために用意した水瓶から水を飲んでいいと言いました。

11-12節。ボアズは、ルツを祝福しました。「あなたの夫が亡くなってから、あなたが姑にしたこと、それに自分の父母や生まれ故郷を離れて、これまで知らなかった民のところに来たことについて、私は詳しく話を聞いています。 【主】があなたのしたことに報いてくださるように。あなたがその翼の下に身を避けようとして来たイスラエルの神、【主】から、豊かな報いがあるように」。
さらなる配慮
ボアズは、さらにルツに良くしてやります。食事の時間になると、ルツが拾った落ち穂に手を付けなくてもよいように、自分たちの食べ物をルツに分けてやったのです。「食事の時、ボアズはルツに言った。『ここに来て、このパンを食べ、あなたのパン切れを酢に浸しなさい』」(14節)。

その上、午後の仕事が始まると、ボアズはこっそりしもべたちに言いました。「彼女には束の間でも落ち穂を拾い集めさせなさい。彼女にみじめな思いをさせてはならない。 それだけでなく、彼女のために束からわざと穂を抜き落として、拾い集めさせなさい。彼女を叱ってはいけない」(15-16節)。

単にルツやナオミのことをあわれんでいただけなら、しもべたちが収穫した大麦の一部をルツに与えればいいでしょう。しかし、ボアズはそうしませんでした。ルツが一生懸命に働いて手に入れた食料を、姑であるナオミの元に食料を持って帰る。その体裁を保ってやったのです。

カウンセリングの勉強をしていたとき、こんなことを教わりました。それは、面談が終わったら、相談にいらっしゃった方より先に、あなたの方から「ありがとうございました」と感謝しなさいということです。

本来、相談をする側も受ける側も、どちらが上でどちらが下ということはありません。しかし、相談する側は、どうしても自分の方が下だと感じ、さらには惨めさを覚えてしまうことがあります。そう感じさせないために、「お話を聞かせてくださって、ありがとうございました」と、相手より先に感謝するのだと教わりました。

ボアズは、ルツに惨めな思いをさせないよう、一方的に施しを受けるのではなく、自分の手で働いて糧を得られるようにしました。しかも、ルツが十分働きの結果を得られるように、背後でこっそりとサポートしています。

ルツとの結婚

ナオミの願い
ことの顛末を聞いたナオミは、ボアズがルツを妻として迎えてくれるといいなと考えました。モーセの律法には、次の2つの定めがあります。
  1. 一つは、人が貧しさのあまり土地を売ろうとする場合、親戚の者が金を出して買い戻さなければならないという定め。
  2. もう一つは、誰かが子どもを残さず亡くなった場合、残された未亡人を死んだ人の弟が妻として迎え、最初に生まれた子どもを兄の子どもとしてその遺産を相続させるという定めです。ふさわしい兄弟がいない場合には、親戚の者がその義務を負います。
ナオミは、貧しさの故に先祖代々の土地を手放さざるを得ない状況でした。そして、息子は2人とも死んでしまいましたから、ルツの再婚相手が家族の中にはいません。

そこで、近親者であるボアズに土地を買い戻してもらい、さらにルツと結婚してもらいたいと考えたのです。それは財産のことが心配というよりも、自分に着いてきてくれたルツの愛情に報いたいという思いからです。

そして、ナオミはルツに、どうしたらボアズの妻になれるか教えました。
ルツの行動
ルツはナオミが言ったとおりにしました。きれいに着飾ると、ボアズが大麦を脱穀しているところに行き、ひっそりと身を隠しました。そして、夜になります。泥棒に盗まれないよう、ボアズは脱穀された大麦のところで寝ていました。そこにルツは忍び込み、布団の足のところをめくってそこで寝始めました。

夜中に目を覚ましたボアズは、女性が足下で寝ていたのでびっくりして、名を尋ねます。すると、ルツは言いました。「私はあなたのはしためルツです。あなたの覆いを、あなたのはしための上に広げてください。あなたは買い戻しの権利のある親類です」(3:9)。

覆いを自分の上に広げてくださいというのは、ボアズがルツに出会ったとき、彼女を祝福して言った言葉を思い起こさせます。「あなたがその翼の下に身を避けようとして来たイスラエルの神、【主】から、豊かな報いがあるように」(2:12)。ルツは、神さまが自分を覆って守ってくださっているように、あなたも私を覆い、守ってくださいとボアズに願いました。すなわち結婚してくださいという意味です。なかなか情熱的なプロポーズですね。
ボアズの理性的な行動
ボアズはプロポーズを受け入れました。しかし、すぐにそのまま結婚生活をスタートさせたわけではありません。彼はあくまでも理性的に行動しました。

ボアズはルツに、自分よりもナオミの夫だったエリメレクにに近い親類がいると言いました。その人がルツとの結婚を受け入れれば、自分はルツと結婚できません。しかし、ボアズはこういってルツを励ましました。「もし、その人が親類の役目を果たすことを望まないなら、私があなたを買い戻します。【主】は生きておられます。さあ、朝までお休みなさい」(3:13)。

その夜、ボアズはそのままルツに何もせずに寝かせ、明るくなる前にナオミの元に返しました。その際、ボアズはルツにたくさんの大麦を持たせています。これは当面の生活の糧であると共に、ナオミに対して「ルツと結婚することを了承した」ということを知らせるサインでもあります。
ナオミも、ボアズがルツを愛してくれていることを正確に受け止め、ルツに言いました。「娘よ、このことがどう収まるか分かるまで待っていなさい。あの方は、今日このことを決めてしまわなければ落ち着かないでしょうから」(3:18)。
ボアズと親戚の交渉
ナオミが言ったとおり、ボアズはその日のうちに行動を開始しました。自分よりもエリメレクに近い親類に話しかけ、エリメレクが遺した財産が失われようとしているから、モーセの律法の規定に従ってあなたが買い戻すようにと言いました。

最初、その親類はエリメレクの財産を買い戻すことを了承しました。しかし、ボアズはその人に、財産を買い戻すだけでなく、息子の未亡人であるルツと結婚して子どもをもうけ、さらにエリメレクの未亡人であるナオミも扶養しないといけないことに注意を向けさせます。

すると、その人は買い戻しの権利を放棄しました。高いお金を出して財産を手に入れても、それはルツとの間に生まれる子どものもので、自分のものにはなりません。おまけに扶養家族が増えるのでは、損するばかりだと思ったのです。

その話し合いは、町の長老たちの前で行なわれました。ボアズは公式に、ルツと結婚する権利を得たのです。
ボアズとルツの結婚
こうしてボアズはルツと結婚しました。もちろん、ナオミも経済的に支えました。やがてルツはボアズに男の子を産みます。その子がオベデ、オベデの子がエッサイ、そしてエッサイの八男坊が後のダビデ王です。
それでは、私たちはボアズに関する記録から、何を学ぶことができるでしょうか。それは、彼のルツに対する行動は、イエスさまが私たちに対してしてくださったことであるということです。そして、イエスさまは私たちの生き方のモデルですから、私たちが他の人に対してどのように接したらいいかも教えてくれています。

2.イエス・キリストの私たちへの接し方

内面を評価した行動

ボアズに優しい言葉をかけてもらったとき、ルツは思わずひれ伏して言いました。「どうして私に親切にし、気遣ってくださるのですか。私はよそ者ですのに」(2:10)。

しかし、ボアズにとっては、ルツが外国人だということは差別の理由になりませんでした。ボアズが見ていたのはルツの美しい内面です。ルツは姑を愛し、イスラエルの神を愛していました。そして、一生懸命に働く勤勉さを持っていました。ボアズはそれを評価し、好ましいと思ったのです。

ボアズの曾孫であるダビデが神さまによって王に選ばれたとき、神さまは預言者サムエルにいいました。「人はうわべを見るが、【主】は心を見る」(第1サムエル16:7)。

イエスさまが私たちをご覧になるとき、私たちの内面を見てくださいます。たとえイケメン細マッチョでなくても、お金をたくさん持っていなくても、社会的な地位が高くなくても、仕事や勉強などですごい成果を上げていなくても、芸術的なセンスがなくても、病気を抱えていても、イエスさまが評価なさるのはそこではありません。

私たちがどんな心で行動しているか、です。どんな動機でそれを始めたのか、どんな思いでそれを続けているのか、です。

イエスさまは、私たちがイエスさまを愛し、イエスさまに喜んでいただきたいという思いで始めた行動、他の人の役に立ちたいという思いで始めた行動を評価してくださいます。そして、それを続ける間にどんな思いを持っていたかに注目し、評価しててくださいます。
私たちも内面を見よう
私たちも、相手が大人でも子どもでも他の人を評価する際には、結果ばかりに注目するのではなく、行動の裏にあるその人の内面に注目しましょう。どんな良い動機でそれを始めたのか、そして、そこをほめたり感謝したり感激したりしましょう。

恵みに満ちた行動

ただ、結果だけでなく、むしろ内面を評価していただけると言われても、私の内面は本当にきよくて正しくて愛にあふれていると、自信を持って言えるでしょうか。
  • 神さまや人への愛が動機なのではなく、自分がほめられたいという思いで行動しているときがあります。
  • 本当はやりたくないけれど、やらないと人に何を言われるか分からないからという恐れから、いやいや行動することがあります。
  • たとえ良い動機で始めたとしても、途中でつらくなったり飽きたりして、簡単に投げ出してしまうことがあります。
ボアズは、ルツに対する買い戻しの権利を行使しました。権利と呼ばれていますが、実際には一方的な施し、一方的な恵みです。それでも、ルツのことを好ましいと思っていたボアズは、喜んで犠牲を払いました。彼は恵みを実践したのです。
イエスの犠牲
イエスさまも、私たちを恵みの愛で愛してくださっています。私たちは行動も内面も不完全なのに、天の父なる神さまはそんな私たちを愛してくださり、子どもとして迎え入れ、永遠に祝福したいと願ってくださいました。

そして、私たちの不完全さ、すなわち罪を赦すために、イエスさまが十字架にかかって身代わりとして罪の罰を受けてくださいました。死んで葬られますが3日目に復活し、私たちと父なる神さまを親子として結びつけてくださっています。

イエスさまの恵みは、赦しという形で私たちの前に表されました。
赦しの愛を実践しよう
イエスさまのおかげで赦された私たちも、他の人の失敗に対して赦しの愛を実践し、寛容に接しましょう。

理性的な行動

ボアズは、ルツを愛していました。しかし、ただ感情に流されたのではなく、理性的に接し続けました。すなわち、ルツを好ましく思う一方で、どのように行動することがルツにとって最も良いかということを冷静に考え、実践したのです。

法的な問題を解決するまでは、結婚の話を進めなかったこともそうです。そして、大麦をそのまま渡すのではなく、ルツ自身が落ち穂拾いを続ける体裁を保ちながら、たくさん拾えるように陰で配慮してあげたのもそうです。彼女に惨めな思いをさせないようにという優しい、しかし冷静な判断ですね。

一方で、ルツにプロポーズされたときには、脱穀した大麦をそのまま持たせています。これは結婚承諾のしるしであって、施しと受け取られる心配が無いという、やはり冷静に判断した結果です。
イエスの理性
イエスさまは、私たちを情熱的に愛してくださっています。と同時に、極めて理性的に私たちに対して何をすべきか計算してくださっています。私たちの人生に起こることは、私たちを愛してやまないイエスさまの、緻密な計算に基づいています。ですから、それを信じる私たちは、何があっても大丈夫だと安心し、たとえ問題に巻き込まれても、これがどんな祝福につながるのだろうかと、ワクワクしながら待つことができるのです。
理性的な愛を実践しよう
私たちも、イエスさま、そしてボアズに倣って、情熱的でありながら同時に理性的な愛し方をしましょう。自分がしたいことをするのではなく、本当に相手にとって必要なこと、相手の幸せに役立つことは何かと考え、それを実践しましょう。

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